2010/07/13

Wittner No.921 tuning fork 音叉 調整

使用しているギターのtaka-miniには簡易的な電子チューナーが内蔵されていて、音が合えばLEDが点灯するようになっているのだが精度はイマイチ。プラスマイナス5~10セントといったろころ。低い音ほど怪しくなってくる。これではジャストにはできそうもない。そこで普段は20年以上前に買った音叉を使ってチューニングをしている。慣れれば音叉の方が下手な電子チューナーよりも高精度にチューニングできる。使っている音叉は Wittner No.921。世界的定番。

Wittner No.921 ウイットナー(ドイツ)tuning fork
サイズ 120mm
径 4.5mm
定価 735円
Wittnerの音叉は安物音叉と違ってフォークと柄のつながりがスムーズできれい。めっきは曇りやすい。20年も使っているとかなりくすんでしまった。たまに布できれいに拭いてやらないと錆が出てしまうと思う。めっきの質は良くはないのだが、妙にテカテカしているめっきよりは高級感はある。
GERMANYと刻印がある。いまどき珍しくドイツ製。
オマケでもらった音叉とWittnerを比較すると、持続音に大きな違いが出た。Wittnerはそこそこの大きさで長く音が持続するが、オマケ音叉は減衰が早かった。またオマケ音叉は精度も悪く440Hzが出ていなかった。あと見た目もよろしくない。ピカピカ安めっきに溶接跡が汚いとか。Wittnerは安心して使える音叉と言えそうだ。

本当に440Hzだろうか?
確認してみる。誤差の確認方法は簡単で、PCで録音して1秒間の波形の数を数えるだけ。440Hzならば440周期ある。実際には数えていられないので、人工的な波形と比較して誤差から計算して確認している。
測ってみたら若干低く439.75Hzだった。誤差は-0.98セント。経年変化や扱いで多少は狂うと思われるので、新品ならもう少し精度が高いかもしれない。

また温度で体積が多少は変化するので、ジャスト440Hzをキープするのは難しい。夏と冬では10セント近く誤差が出てしまうだろう。そこで手で握って多少音叉が温まった状態を440Hzにするとよいと思う。

1セントは1オクターブを1/1200にしたもの。周波数f0に対して周波数f1の音程差は 1200log2(f1 / f0) で計算できる。

音叉と電子チューナーの440Hzの波形
音叉はキレイなサイン波であるが、電子チューナー等のビープ音は高周波の含まれたギザギザ波形で、音叉とは全く違った波形。メリットデメリットは不明だが、気分的に音叉の純粋なサイン波が好き。割と繊細な作業であるチューニングなのに「ビー」とうるさい電子音はどうも好きになれない。楽器によってはあれぐらいでないと使えないのかもしれないけど。下の絵は音叉、チューナー、メトロノームそれぞれの波形。
音叉の調整
1Hz以内の誤差は聴いただけでは分からないし、ギター1本で演奏する分には何の問題もないのだが、気持ち悪いので440Hzジャストに音叉を調整してみた。

音叉の調整手順としては、フォークの先端を削れば、フォークが短くなることで音は高くなり、フォークの付け根を削れば、フォークが長くなるので音が低くなる。製造工程でも同じ方法で調整しているようだ。根元は元々削られていたので調整跡だろう。鉄製なので削ったところから錆びてくるので、何らかのさび止めはした方がよさそう。

作業はかなり繊細で、ヤスリでなでるだけで0.1Hzぐらい変化してしまう。はじめ低かったので、先端を削ったら、削りすぎて高くなってしまった。ヤスリで、なでては、下記のように録音して波形で確認しながら追い込んでみた。上段が人工的なサイン波で下段が音叉の波形。すばらしく理想的な波形になっているのが分かる。上記作業を繰り返してジャスト440Hzと言ってもいい範囲まで追い込めた。完全な自己満足の世界だが。

音叉の原理
音叉のかたちが何となく不思議に思えたので、風呂に入りながら、ちょっと考えてみた。まずは音叉のようなU字形ではなく、ただの棒の場合を想定すると、特定のピッチを持たない音が出てしまう。この状態はトライアングルに近いかもしれない。次にその棒の中心を糸で吊るして叩くと、特定のピッチが出るようになるはず。

簡易実験で確認してみる。真鍮丸棒を中心から吊るして、音叉のように鳴らしてみる。特定のピークを持つが上音も少し出ている。でも使えなくはない音だ。ただ持続音があまり続かない。材質やU字のかたちに秘密がありそうだ。簡単に音叉にはならないのね。他にアルミパイプも同じようにやってみたが、音がでかく明らかなピークもある。ただ持続音が続かない。内部が空洞なので共鳴しているのだろう。またアルミ平板棒も同じように叩いてみる。丸棒よりも明らかに大きな音が出る。これは空気に触れている面積が大きいのが理由だろう。音叉には断面が丸と角があるが、音の大きさと持続音に関係している。インピーダンスの計算をすれば、おおよそのイメージがつかめそうだ。最後にアルミ板棒を音叉のように曲げてみたら、ピークの周波数が下がり、基音がしっかり持続し、音叉らしくなった。また上音もすぐに減衰するようになった。さらに曲げた箇所を手で持ってもしっかり鳴るようになった。U字形は大きな意味があったのね。ただの棒の状態とは全く別物。U字それぞれは平行の状態が最適で、これの角度が変化すると音が変わってしまう。音叉は改めて精密なものだと思えた。

音叉をはじめに考えた人は、U字形を、たまたま発見したのだろうか? 素晴らしい発明だ。そのうち物理学からも追ってみようと思う。