2014/04/10

10 Holes Diatonic Harmonica SUZUKI OLIVE
10ホールズ・ダイアトニック・ハーモニカ
(ブルースハープ)

最近リード楽器について調べていたら、ダイアトニック・ハーモニカの音の配列やら、テクニックが興味深く、サンプルとして鈴木楽器の「OLIVE」を買ってみた。目的がハーモニカを吹きたいというのでなく、構造やらのチェックだったりする。それでも演奏について、ある程度は知っておきたいので、しばらくは地道に練習もしみようとは思っている。


フリーリード楽器

ハーモニカはフリーリードという一定の音程を出す金属パーツで作られている。リードの一方が固定されていて、もう一方が固定されていないため、フリーリードと呼ばれている。基本的には、ひとつのリードはひとつの音程しか出せないため、各音程分のリードが付いている。

フリーリードの発音原理は、空気がリードの隙間から抜ける際にリードが振動し、空気が通ったり、さえぎられたりして空気の疎密波を作ることができる。これが聞こえる音そのものとなる。ハーモニカは小さくても、それなりの音量が出せるのはこのためであり、他のフリーリード楽器もボディのサイズと音量は関係がない。
下図はOLIVEのリード構造。吹くと上リードが振動し発音する。その際、下リードからは空気は漏れるが音は出ない。逆に吸うと下リードが発音し、上リードからは音が出ない。上下リードは影響しあっている。

リードの振動パターンから波形は非対称で、矩形波に近く、多くの倍音を含んでいるのが特徴。特に人間の耳に敏感な周波数が豊富に含まれているので、実際の音量よりも大きく聞こえたり、よく通る音になる。下はA4(440Hz)の音の波形。


フリーリード採用楽器は構造に自由度があるため、さまざまな楽器が考案されてきたようだ。原理的には中国の笙(しょう)とも同じなので、2500年以上の歴史を持つ。それがヨーロッパに伝わって現在のフリーリードになった見方が強いようだ。1810年代にリード・オルガンとして普及し、その製造工程での検音用道具からハーモニカが誕生したらしい。1830年代には早くもハーモニカは流行したようだ。1857年には現在のホーナー社がハーモニカ製造で創業している。

現在フリーリードを使ったメジャーな楽器としては、大きく分けてアコーディオン、オルガン系の楽器とハーモニカ系に分けられると思う。ハーモニカはもっともコンパクトで、シンプルな構造をしており、フリーリードのメリットを最大限に生かしているように思う。また吹口とリードの距離が短いため、音色等のコントロールが可能のようだ。

音楽教育としてのハーモニカ

1950~1970年代にかけて、国内では音楽教育に取り入れられていた。安価で小さく、シングルハーモニカであれば、それほど難しくないという点が採用理由のようだ。しかし視覚的に教えにくく、吹いている本人もどこを吹いているのか分からないなどから、1970年代ごろから徐々に鍵盤ハーモニカに取って代わることになる。

吹いたり吸ったりする楽器

ハーモニカは吹いても吸っても音が出る楽器。吸っても音が出るという、かなり大胆な仕様で、他の楽器ではほとんど見られない。もっとも初期のハーモニカは吹くだけだったようだが、すぐに吹き吸い仕様が定着したようだ。息を吐きながら喋る人間にとってはやや不自然に感じる。鳥であれば吸いながらも鳴けるので、鳥とハーモニカの相性はよさそうだけど。

ハーモニカの種類

ダイアトニック・ハーモニカ、クロマチック・ハーモニカ、シングル・ハーモニカ、複音ハーモニカなどいろいろな種類のハーモニカが存在する。下の画像はおおよそ大きさの比較ができるように揃えてみた。

10ホールズ・ダイアトニック・ハーモニカの出せる音程は基本的にピアノの白鍵だけで、Keyごとにハーモニカを持ち替える必要がある。しかも白鍵の一部は出せない音も存在するので、テクニックでカバーするしかない。 10cmほどのコンパクトな外観に似合わず、音域は3オクターブもあり、かなり広い。 構造はハーモニカの中でもシンプルな部類。 1本当たりの価格が3000円前後と安い。 ブルースやロックでよく使われている。


クロマチック・ハーモニカは、ピアノで言うと白鍵、黒鍵ともあり、キーによって持ち替える必要性があまりないハーモニカ。構造的には白鍵が並んでいるのだが、スライドレバーの操作によって、白鍵をすべてシャープさせることができる。この切替でどんな音程も安定して出すことができ、ジャズなどの演奏にも対応できる。ただ構造が複雑になり、サイズもダイアトニック・ハーモニカに比べて大きく20cm前後あり、厚みもある。価格も2~3万円する高価なハーモニカ。


その他、昔学校教育等で使われていたシングル・ハーモニカ ダイアトニックの素直な配列で交互に吹く吸うの順になっている。AとBは吸うので、若干距離が離れている。ピアノ黒鍵部の音はない。大きさは15cmぐらいで、小ぶりだが、10ホールズよりは大きい。

日本で普及している複音ハーモニカはダイアトニックで、上下に同じ音のリードがあって、ピッチを微妙にずらして、トレモロ効果を生み出している。 大きさは18cmぐらいあるが、厚みがそれほどないので、クロマチックほど大きな印象はない。他にもアンサンブル用のハーモニカなどさまざまなものが存在する。
ハーモニカは見た目は似ていても、音の配列が違うので、多くの場合、どれかに専念するのが普通のようだ。

10ホールズ・ダイアトニック・ハーモニカの呼び名

いろいろな呼ばれ方がされていて混乱する。日本では「ブルースハープ」という言い方が多いかもしれない。ただ、これはHOHNER社の商標なので、メーカーは普通「10ホールズ」という言い方をしている。海外を見ると「ダイアトニック・ハーモニカ」という言い方が多いように思う。どれも同じ種類のハーモニカなのだが、これだけバラバラな呼ばれ方がされている楽器も珍しいかもしれない。

10ホールズの音域

3オクターブありKeyごとに以下のような違いがある。下のラインナップSUZUKI Oliveの場合で、普通はHigh-GとLow-Fはない。以下の階名は国際式にしている。
Key 最低音 最低音(Hz) 最高音 最高音(Hz)
High-G G#4 392 G#7 3136
F# F#4 370 F#7 2960
F F4 350 F7 2794
E E4 330 E7 2638
Eb Eb4 312 Eb7 2490
D D3 294 D7 2350
Db Db4 278 Db7 2218
C C4 262 C7 2094
B B3 246 B6 1976
Bb Bb3 234 Bb6 1864
A A3 220 A6 1760
Ab Ab3 208 Ab6 1662
G G3 196 G6 1568
Low-F F3 175 F6 1396



10ホールズの音階配列

C調の10ホールズの音階配列は以下の通りで、奇妙な配列になっている。黒鍵の音がないのはまだ良いとして、白鍵の音ですらところどころない。また不規則でオクターブずれると配列も変わってしまう。明らかに和音を重視した配列で、単音ではかなり使いにくい配列だ。 和音としては吹きでC,E,Gを組み合わせが出るでの普通はCとして使うだろう。吸いではG,B,D,F,Aの組み合わせが可能なので、普通はG7やDmとして使うかな。
Blow C4 E4 G4 C5 E5 G5 C6 E6 G6 C7
C調 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Draw D4 G4 B4 D5 F5 A5 B5 D6 F6 A6

さらにベンド、オーバー・ドロー、ブロー等というテクニックを使うと使える音が増え、すべてをカバーできるようだが、かなり不安定な音になるようなので、素人がちょろっと練習してできるような話ではないようだ。なんとか使えるのはベンドの音までで、それも安定して他の音と同じように鳴らすには、かなりの練習が必要そう。
Over Blow D#4 G#4 D#5 F#5 A#5
Blow Bend Bb6
Blow Bend Eb6 F#6 B6
Blow C4 E4 G4 C5 E5 G5 C6 E6 G6 C7
C調 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Draw D4 G4 B4 D5 F5 A5 B5 D6 F6 A6
Draw Bend Db4 F#4 Bb4 Db5 Ab5
Draw Bend F4 A4
Draw Bend Ab4
Over Draw C#6 F6 G#6 C#7

このような配列から、使いやすい音と、使いにくい音が存在する。よって曲のキーごとにハーモニカを持ち替える必要が出てしまう。12キーすべてをカバーするには12本必要となり、なんとも不経済。実際には曲のキーは決まってくるので、数本で済むことになりそうだが、それでも持ち替えるスタイルが基本。メリットとしては常に移動ドの思考で音を捉えることができるので楽ではある。

ディミニッシュ配列

単音メロディのやりにくさとキーごとに持ち替える不経済さを克服するために音の配列を少し考えてみる。半音ベンド必須で、音域もやや狭くなるが、ディミニッシュ配列が適当かな? コンパクトなスタイルはそのままにすべての音が無理なく出て、キーが変わってもそれほど困らない配列。3本用意すれば、同じ吹き方でどんなキーでも対応できる。本気でやるなら、音域はもう少し広くしたいので、最低でも12穴にした方がいいかもしれない。12穴ぐらいならボディサイズは普通の10ホールズと同等に作れる。
Blow C4 Eb4 F#4 A4 C5 Eb5 F#5 A5 C6 Eb6
C,Eb,F#,A調 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Draw D4 F4 G#4 B4 D5 F5 G#5 B5 D6 F6
Draw Bend Db4 E4 G4 Bb4 Db5 E5 G5 Bb5 Db6 E6

後で調べてみたら、当然と言うか、同じことを考えて実践している人はいるのね。また鈴木楽器では、こういう変則チューニングの特注も受け付けているようだ。

音律

10ホールズの多くは純正律で作られているようだ。ただはっきり純正律と書いていないところが微妙なのだが・・・ もし純正律なら合奏するとき平均律の楽器と音がぶつかって気持ち悪いのだが・・・ということで、平均律のハーモニカがないか探したら、鈴木楽器の「Olive」というハーモニカが平均律だったので、これを購入した。
実際に音が平均律になっているかチェックしてみる。どうも442Hzで調整されている? 吹き方の加減でピッチが多少は変わってくるが、素人吹きでもほとんどの音はぴったり。一部の音は吹き方が悪いのだろうけど8セント以内というところ。鍛えればかなりピッチを正確に出来ると思う。ギターに比べれば文句なく合格でしょう。

SUZUKI OLIVE C-20 分解

同梱物は以下のもの。本体も小さいが箱も小さくかわいい。
定価3800円+税 実売3000円前後
サイズ100×27×20mm
重量70g


本体とソフトケース。

バックから音が反響する構造になっている。カバーの仕方で音の傾向は変わってくる。





カバーはステンレスを緑色に加工したもの。めっきや塗装でもないとあり、やや不明な発色処理。酸化処理かな? カバー裏面も同じようになっている。色は緑ではあるが、カナブンのような複雑な発色をする。

ハーモニカはパーツ数がすごく少ない。分解メンテが簡単なので気に入った。

天然木繊維入りボディという木とプラの合成素材。水分で変形しにくくなっている。



カバー止めネジはM2でカバー止めナットとセットで使用する。これだけでも売られている。サウンドハウスで8円と40円。カバーの位置合わせは前後方向には溝があるが、横方向は適当に合わせる。



かなりの高精度で作られている。特にリード周辺はなかなか。下写真は上側の吹いて鳴るリード。リードは穴の中にあるので、この写真からは確認しにくい。

下側の吸って鳴るリード。カバーを外すだけで、むき出しになるので取り扱い注意。

ピッチはリードを削って調整するのだが、レーザー加工かな?

プレートを止めているネジはM2。カバーに合わせてか若干緑がかっている。


試しに吹いてみると難しすぎた

第一印象としては、まず、まともな音を出すための、吹く、吸うができない。特に吸うのが難しい。ひとつの穴だけに吹き込むのも難しい。 また音の出やすさが穴によって違うので、それらの音の粒や音色を揃えるのも大変。吹たり吸ったりするので、鋭い立ち上がりは苦手。吹口の移動なので速いフレーズも難しく、オクターブ以上離れた音を行ったりきたりするのも困難。ダイアトニックから外れた音は当然吹くのが難しい。ベンドやオーバーフローなどを駆使する必要が出て、一気にハードルが上がってしまう。
吹口も音の出にくさを考慮してか、穴の幅が微妙に違う。音が出やすい4番は狭めで、音の出にくい3番はやや広い等。

さらに配列が整然としていないので、これを感覚的に覚えないと、まともな演奏は無理だろう。いろいろハードルが高すぎる。ベンドで音を正確に下げつつ、音色もよくするとなると、数年がかりという気がする。どこまで取り組むか分からないけど、ベンドなしで、メロぐらいは吹けるようにしたいところ。

この楽器の良いところは、とにかく小型であること。そしてダイアトニックスケール内であれば、コードもそこそこ吹けて、それっぽくまとまるところが魅力だろう。隣の音が間違って鳴ってしまっても気にならないところもラフに扱えていい。
他の管楽器に比べればハーモニカの音量は控えめなので、家で練習しやすいかもしれない。ただ耳に敏感な周波数が多いので、音量以上にうるさく聞こえる。 またOliveはかなり小さい音も出せるので、個人的にはそこが気に入った。人の喋る音量と同じぐらいでも、結構ちゃんとした音で鳴ってくれる。