関数電卓 CASIO fx-370ES (自然表示)

国内では関数電卓といえば、カシオかシャープという印象が強い。カシオは世界の関数電卓のシェア40%でシャープをリードしているようだ。このfx-370ESはカシオの関数電卓の中でも一番安いエントリーモデルとなる。

カシオホームページ http://casio.jp/dentaku/
定価 4,725円
実売価格 1,980円 程度 値引率がすごい。型落ちするともっとすごい。

安い、いまどきの関数電卓がこれ。十分すぎる機能と、画期的な数学自然表示、入力機能を備えている。数学自然表示は2004年8月にfx-82ESで採用され、今後の関数電卓は、この方向に進んで行くと思われる。
これからの世代はこういう電卓がいいと思う。実際いじってみると、よく出来ているし、以前の機種の使いにくさも改善されているように感じる。
実は子供用に購入。電卓で遊んでもらおうと思ったので。まずは私が使い勝手をチェック。

パッケージ


パッケージは、店頭でもキーが押せて、チェックできるように、キー部分が穴開きのブリスターパックになっているのだが、保護になっていないような気がするのだが・・・


取扱い説明書

取扱い説明書は小さすぎて、読みにくいのが残念。



ハードカバー

カバーはスライドさせて、カチッとはめる。ガタもなく安定感はそれなりにある。このスライド方式そのものはよいと思う。

取外したカバー。

カバーの裏には関数電卓お約束の基本操作が書いてある。キー見れば分かるような操作はいらないのだけど。自分で科学定数など必要そうなものを書いて貼っておけばいいか。



本体

カバーを装着していない状態の本体。

両サイドの丸みのあるエッジのためか、かなり薄くスマートな印象を受ける。しかしエッジの丸みは、薄く見せる効果はあるものの、それが機能的かというと、そうでもない。片手でホールドしにくい形状なのだ。

本体裏の手前側の丸足は、だれていて、かっこわるい。関数電卓としては、かなり気に入ったのだが、筐体デザインは一歩及ばずと言った印象だ。

単4形電池の入っている部分がぷっくりとふくれている。上位機種のfx-912ESは、太陽電池&ボタン電池の組合せなので、このふくらみはないのかな? 

単4形電池は待機状態17000時間、連続演算で6000時間も持つ。仮に1日1時間程度使うとすると、待機状態で46年、連続演算で16年持つ。こうなると容量を使い切る前に電池そのものが劣化してしまうだろう。説明書には2年に一回交換するように書いてあるが、5年ぐらいは平気で持つと思う。とにかく他の機器では考えられないぐらいの低消費電力を誇るマイクロコントローラを使っている。

おそらく沖マイクロデザイン(2011年に ラピスセミコンダクタ株式会社 へ社名変更)のものだと思われる。電池交換用の電池蓋はなく、ねじをはずして分解のような作業をして電池交換を行う。この仕様からすると、一般向けではないと実感させられる。関数電卓を使うような人は、分解ぐらい慣れているだろうと思ったのかな? ちなみに機能が同等で太陽電池付きの上位機種fx-912ESはボタン電池を3年に一回交換するように勧めている。こちらは電池蓋あり。結局太陽電池付でも電池を使うし、ボタン電池なので割高になる。ランニングコストは単4形を使うfx-912ESの方がお得のようだ。

151010
実際に7年持っている。まだまだ問題なく使えている。この手の機器の場合は、液晶表示の濃度が薄くなったら、電池の交換時期なのだが、その気配は今のところない。


数学自然表示

セールスポイントである表示部分。「数学自然表示」や「ナチュラルディスプレイ」と、カシオは呼んでいる。微分、積分、ルート、分数などのちょっと特殊な記号、数式等もナチュラルに表示され、答えも小数などに変換されず、そのまま出てくる。

入力の分かりやすさはピカイチだが、打つにはカーソルキーを使うことも多く、やや煩雑になる。 また、あまり複雑な式を入力するとレスポンスが悪くなってくるが、電卓で複雑な計算をするのは間違いなので問題はない。複雑な計算はPCを使うべき。

分数は分数で結果が表示されるが、小数へ切り替えたいときは S⇔Dキー(standard-decimal)を押す。 仮分数、帯分数の切り替えができるのも面白い。 小数と小数の計算結果が分数で出てしまうのはいただけない。

自然表示は見やすくてよいのだが、式が1行でしか表示されないので、横にスクロールする必要がある。意外とすぐに突き抜けてしまいスクロールする羽目になる。全体が見えないというのは何とも使いくい。fx-4800Pは行を折り返して表示し、4行まで見渡せるので、ほとんどの場合、式はすべて見渡せていた。そこでLineに表示を試してみたが、切り替えても1行表示は変わらなかった。しかも切り替えると、式はキレイさっぱり消えてしまう。

表示は最大3行だが、これは複素数の計算のとき、式は1行で、答えが虚部と実部に分かれて表示される場合ぐらい。基本的には式1行に答えが1行、分数表示などの場合は2行(小さめ)となる。式は1行なので、カーソルでスクロールする必要がある。

分数表示で計算し、答えをだすと、入りきらず上部が切れる場合あり。指数などが切れる。

総合的には、「数学自然表示」はよいと思うし、今後はこの方向だろう。手で書く計算式と同等というのは素直に喜ぶべきことだろう。計算機の負荷は増すことになるが、肝心の計算が遅すぎるということもないし、バッテリーがすぐなくなることもないので、十分実用的な範囲にまとめられていると思う。 これに慣れてしまうと、従来の電卓は見にくくて仕方ないだろう。


パネル面をシャキっと撮影してみました。12インチXGAの画面で見ていれば、実物大に近いと思います。この写真とカシオホームページから取扱説明書をダウンロードすれば、十分機能のチェックはできると思います。それにしてもメーカーホームページで、重要なキーの並びを確認できないような小さな写真を載せているのはいただけない。また取扱説明書には電卓のキーレイアウトすら載っていない状況だ。

カシオの取扱説明書をダウンロードできるページはこちら
http://support.casio.jp/manualfile.php?cid=004004002

キーレイアウトは、なかなかよい。メインで使っているCASIO fx-4800Pと比較すると、使い勝手はかなり向上しているように思う。モードで深い階層に入らなくても、ほとんどの計算は可能になっている。またパネルを見るだけで、カシオユーザーなら説明書なしですぐに使いこなせそうだ。一番評価できるのは、n進数の変換がすごく楽チンになったこと。

キーアサインについては、 逆数 1/x が表にあるのはよいね。よく使うので。

Ans が表にあるのもいいね。これもよく使う。

キータッチは、ややひっかかりを感じる。4800よりは固め。総合的には悪くはないが。

残念なのは電源をOFFすると、前回計算した式がすっかり消えていること。

計算履歴は14まで残るようだ。単純な計算をした場合そうなった。複雑な計算だと違ってくるかも? 電源を切ればさっぱりすべての式は消えてしまう。電池持ちがいいんで、オートパワーオフの時間設定が変更できるといいのに・・・

A B C D X Y Zのメモリには数字が保存されて、電源をOFFにしても残っている。 設定も残っている。

テーブルは意外と便利かも。方程式のXの値を順次変化させていき、それを最大30まで並べて一覧できる。複雑な公式を使う物理的な運動などをイメージするときは便利かもしれない。とにかくイメージが作りやすくなるので。

電源をOFFするときに、僅かな時間だが「CASIO」とLCDにでっかく表示される。これはちょっと下品。CASIOを使っているのは承知なので、そんなに主張しなくていいのに。あまり見たくないので放置しておくことにした。6分でオートパワーオフになるので問題ない。

位にカンマが付かないのは、桁が増えると見にくくなってしまう。改善してもらいたいところ。

個人的には設計の仕事などでPCが起動していても、多くの計算は電卓を使っている。 PC電卓はキーボードとマウスを兼用することになるので、入力に無駄が多いし、ウインドウの切り替えも必要。やっぱりわずらわしく思ってしまう。また使っているキーボードがテンキーレスだったりするので、何かとPC電卓は使いにくい環境でもある。


fx-370ES 主な仕様

■数学自然表示
■リストベースの統計データ編集
■テーブル演算
■書式通り入力方式
■マルチリプレイ
■基本関数
三角・逆三角、対数・指数、ベキ乗・ベキ乗根、√、2乗、立方根、逆数、乱数、階乗、π
■分数計算
■時間計算 60進・10進数
■2進・8進・16進計算
■論理演算
■標準偏差
■2変数統計
■順列・組み合わせ
■双曲線・逆双曲線
■座標変換
■ENG変換
■複素数計算
■積分計算
■微分計算
■方程式計算
■指数表示指定
■ソルブ機能
■リプレイ機能
■アンサー機能
■マルチステートメント機能
■エラーリカバー機能
■連続演算機能
■%
■数学自然表示
■表示桁数:10桁
■メモリ数:7
■電源:単4電池x1
■サイズ:161×80×14mm
■重さ:110g