時計に最適な電池は?

掛け時計、目覚まし時計等のアナログクォーツ時計に一番適している電池は何か? 現在自宅で使っている電池はアルカリ電池が多い。いくつかにはニッケル水素電池やエネループも使っている。

電池を製造しているメーカーのホームページなどを見ると、時計にはマンガン電池、もしくはアルカリ電池を推奨している。ニッケル水素電池は対象外で、エネループは使用可というレベルだ。 時計が求める電池は、微電流を長期間維持できるもの。最近の大電流を長時間流せる電池とは違う方向のようだ。

では、クォーツ時計は小さな電力しか使わないとあるが、どれぐらいの電流を流しているのか実際に調べてみた。電池の電圧をテスタで測ると1.309V。電流は0.37~0.5mAを1秒ごとに瞬間的(0.2秒ぐらい)に発生させていた。電流発生時間はオシロスコープで見ているわけではないのでいい加減です。まぁとにかく小さい電流だ。他にこんな消費電力の小さいプロダクトは見当たらない。しかも休んでいる時間の方が圧倒的に長い。これなら電池は長持ちすると納得できる。ちなみに松下電器の乾電池データシートを見ると、マンガン電池の単3形では10mAを100時間以上流す容量があるらしい。この数値を元に単純計算してみると、上記電流が1秒間に0.2秒パルスが発生したと仮定し、415日以上駆動できることになる。電流がデータシートにないぐらい小さいので、さらに持続する可能性がある。まぁ実際の使用感も2年は持っているような気がする。それでは、何電池が一番適しているか?

まず自己放電が大きいニッケル水素電池は向かないだろう。実際に使っているが、1年以上使えたときもあれば、満充電から数週間で時計が止まってしまうこともあった。原因はメモリ効果か、内部抵抗の問題か不明だが何かが劣化しているようだ。放電、充電の繰り返しで復活する可能性もある。安定性という意味ではあまり時計には使いたくない電池だ。

エネループは時計に半年ばかり使っているが、自己放電が少ないためか、今のところ普通のニッケル水素電池のようなトラブルはない。価格を考えると、単3形エネループが1本350円程度と普通の電池よりはるかに高価。導入コストが高くつく。スペック的には充電を1000回繰り返せるようだが、1年ごとに充電して1000年?そんなことはありえない。電池としては5年程度で劣化が目立ってくる。おそらく10年以内に使えなくなるだろう。時計での使用は推奨ではないので、もっと早く劣化するかもしれない。どちらにしても数回しか充電しないことになるので、何度も充電できるという2次電池のよさがあまり生かされていないかんじだ。

アルカリ電池はどうか? 本来マンガン電池よりもパワーを要求する用途に使うようだが、時計は、それには当てはまらない。容量はマンガンの2倍あるが、価格も2倍、もしくはそれ以上するのが普通。さらに問題は液漏れにある。過放電してしまうと液漏れの危険性が高くなる。大きな液漏れまでしなくても、時間とともにそのリスクは高まり、若干の液漏れやマイナス極が結晶化してしまうことも、しばしば経験している。時計はどうか分からんが、場合によっては機器を壊しかねない。国内メーカーは液漏れ防止対策はしっかりされているようだが、それでも長期間使用となると、リスキーな電池であることには変わりない。

元祖乾電池といえるマンガン電池はどうか?これも過放電すると液漏れはするが機器へのダメージは少ないようだ。(その後調べたら同じように腐食性は高いようだ。個人的にマンガン電池の液漏れ経験はない。) 最大の特長は休ませると復活するところにある。大電流を流して弱ってしまっても、しばらく放っておくと、また使えるようになったりするのだ。時計の場合は、常に小電流で、休みっぱなしなので、マンガン電池にとっては、ありがたい環境かもしれない。しかし、最近はマンガン電池を売っている店があまりないように思う。乾電池はアルカリばかりだ。入手が難しい電池になってしまったようだ。

次に、10年使った場合の各電池のコストを表にしてみた。アルカリ電池は経験上2年使えるということにした。つまり5本使用。マンガン電池も1年以上使える気がするが、容量的にはアルカリ電池より少ない。しかし復活する特性があるので、ここでは6本にしてみた。価格は10年後には以下のようになる。


乾電池の種類一本あたりの価格10年間の使用本数10年間のコスト
エネループ350円1本350円
アルカリ電池123円5本615円
マンガン電池42円6本252円

廃棄という面では1本しか消費しないエネループが環境にやさしい電池になる。アルカリ電池はコストパフォーマンスが一番悪くなってしまった。100円ショップの4本入りを買うと一気にコストは安くなるけど・・ マンガン電池は1本何年使えるか不明だが、高くはない。しかし廃棄する本数は一番多くなりそうだ。

さて、結論としては、エネループとマンガン電池を数年使って様子をみようかと思う。エネループは、10年ぐらい使えれば、他の電池との価格差もなくなってくるので、初期投資こそ高くつくものの、10年ぐらいのスパンで考えれば、それほど高いというわけではない。ちなみに単3形エネループの1本あたりの充電にかかる電力は0.1円以内というところだ。10回充電しても1円に届かない計算になる。 マンガン電池は各社推奨なので時計にとって最高の電池である可能性がある。まずはちゃんと試してみようと思う。

先日、世界一の長寿命電池としてパナソニックから「エボルタ」という第四世代乾電池が発表された。使用推奨期限が通常の5年から10年へ伸びたそうだ。また大電流、中電流域だけでなく、時計やリモコンなど小電流域の製品にも使用できるようだ。他電池との小電流時の比較を見ると2倍長持ちしているようなので時計用途でも期待できる。エネルギー密度の高さ、10年間の長期保存性、ひょっとしたら6年ぐらい時計を動かせるかもしれない。発売は2008年4月26日。性能はよさそうだが価格は高め。