ミキサー ALESIS (アレシス) MultiMix 4 USB


購入したのは2010年で随分前だが、そろそろ紹介記事でも書こうと思う。ShureのダイナミックマイクSM58、SM57を使ってパソコンで録音するための「ミキサー兼オーディオインターフェイス」として購入。このミキサーは、そのために最小限の機能を提供してくれる。実際それほど使いこなしているわけではなくて、本来の目的以外の使われ方が多かったりする。簡易ミキサーなのでいろいろ便利なのだ。

本体
かなり小さくて155幅 x 200奥行 x 55高mmしかない。机の上にちょこっと置くには許せるサイズだ。

ALESIS MultiMix 4 USB の主な仕様

実売価格 11450円
USBオーディオインターフェイス内蔵4チャンネル・ミキサー
16bit/44.1kHz固定 USB1.1以上
電源 10V AC 500mA
サイズ 約 (W)155x (D)200 x (H)55mm
重量 約685g

1/2チャンネル 
ラインレベル入力
XLR入力(48Vファンタム電源可能)
ギター入力(1チャンネルのみ)
PAN(ステレオ出力の左右のバランス調整)
HPF(75Hz以下カット)
EQ 10kHz、80Hz プラスマイナス15dB

3/4チャンネル 
ラインレベル入力(共通)
バランス調整

OS標準ドライバーで認識

INPUTS:
Line (CH 1, 2): 10 KΩ input impedance 5.5 mV ~ 4.9 V RMS sensitivity for max output
Mic (CH 1, 2): 600 Ω input impedance balanced 700 mV RMS sensitivity for max output
Line (CH 3, 4): 700 mV RMS sensitivity for max output
HPF (CH 1, 2): 200 Hz (-1 dB), 80 Hz (-3 dB), 20 Hz (-24 dB)

OUTPUTS:
Line: 7 V RMS max
Headphone: 0.5 W into 47 Ω

SIGNAL-TO-NOISE RATIO (max output; JIS A-weighted) :
Line: > 92 dB
Mic: > 62 dB

DISTORTION: < 0.02%
FREQUENCY RESPONSE:
Line: 20 Hz – 20 kHz (± 0.5 dB)
Mic: 20 Hz – 15 kHz (± 0.5 dB)
CHANNEL EQUALIZER: Bass: ± 14 dB @ 80 Hz 、Treble: ± 14 dB @ 12 kHz
CHANNEL FADER KILL: > 90 dB @ 1 kHz
CROSSTALK: > 85 dB @ 1 kHz
INTERFACE: USB1.1 or higher
POWER ADAPTER: 10 V AC, 500 mA

パッケージ表


パッケージ裏


説明書 日本語も付属

アレシス社について

安価な機材を幅広く提供しているメーカーで、すぐに製品が生産終了するメーカーという印象。決まった数を作って売り切って終わりということなのだろうか? ロングライフな商品は少なそうだ。でも製品内容は悪くなく、プロも愛用しているような機材も結構あったりする。特にリバーブとかADATとかが有名かな。

エントリー機種のミキサー

Multi MIx4USBの発売が2009年8月で、2011年11月現在でも販売されている。2年以上なので、アレシス製品にしては息が長い方ではないかと思う。 アレシスのミキサーの中ではエントリー機種になる。実売11,450円(サウンドハウス)で、他メーカーの同クラスと比較してもバンドルソフトがない分、安いのではないかな。でも安価なだけあって基本性能は価格なりのもの。期待してはいけない。

主な特長

4chアナログミキサーにオマケ程度のUSBオーディオインターフェイスが付いている。16bit 44.1kHz固定でPCとの音声入出力が可能。XLR入力が2チャンネル分あって、48Vファンタム電源も利用可能。付属ソフトなし。

本体背面 電源スイッチ、ACジャック、USBポートがある。

チェンネル数
モノラルで数えて4チャンネル。マイク接続できたり、HPF、EQが使えるのは1、2chのみ。

3、4チャンネルはおまけ的で、LRとしてセットで使うような位置づけ。レベル調整は共通で1個しかない。BALでチャンネルのレベルを補正する程度。主にCDなどのライン入力用。

個人的な用途はアコースティックギターの録音や弾き語りなので、1、2チャンネルだけを使う。ということでチャンネル数に不満はないが、ちょっと複雑なことをすると、この入力数では対応できなくなるだろう。

ヘッドフォンの音

音はキンキンしないし、こもった感じもなく普通に使えた。価格からすると悪くはないと思う。出力パワーは結構あるので、普通は8時か9時の位置で使っている。スペックとしては、0.5W into 47Ω。

EQ(イコライザー) と HPF(ハイパスフィルター) 1、2チャンネルのみ

この手の機器はSM58、57を前提に設計していると思われるので当然なのだが、EQやHPFなどは、調整したいポイントがばっちりなので好印象。

HPF(ハイパスフィルター)
HPFはある周波数よりも上の周波数だけを通すフィルター。仕様書によると75Hz以下をカットする。例えば200Hz (-1dB), 80Hz (-3dB), 20Hz (-24 dB)のようになるようだ。このフィルターを通すことで不要な低域成分をカットできて、すっきりした音になる。下図は全体帯域を含んでいるホワイトノイズにHPFをかけたもの。200Hz辺りからカットされているのが分かると思う。SM58で歌を録音する場合などは常時ONにしておくとよさそう。PC側でHPFをかけるならその必要もないけど。個人的にはPCでHPFをかけているが、単体でPAなどに使用する場合はとても便利だと思う。


EQはLO(80Hz)とHI(10kHz)があって、それぞれプラスマイナス15dBの調整が可能となっているが、実はかなり広めにかかる。LOを見る限りなだらかなHPF的な動きにも見える。また下の極端な設定を見ると分かるが、ざっくり1kHz以下をLOで調整し、1kHz以上をHIで調整というかんじ。感心したのは、ちゃんと設定値と実際が一致していること。EQもLPFと同じで個人的にはPC側で処理してしまうので使っていない。でも単体で使うときには必須だと思う。

LO 80Hz 15dBカット


LO 80Hz 15dBブースト


HI 10kHz 15dBカット


HI 10kHz 15dBブースト



筐体デザイン

板金メインで、プラスチックはつまみぐらい。無駄のないコンパクトサイズ。機能優先の無骨なデザインで気に入っている。YAMAHAの同クラス(ちょっと高い)はオシャレな感じで好みではない。


USBインターフェイス

これはミキサーの電源が入っていなくても認識する。バスパワーだけでこの部分は動作しているようだ。Windows側からはUSB Audio CODEC として認識されている。でもミキサーとしては機能しないので何の意味もないのだが。

買ってみないと分からなかったところ
USB経由で入力した音はUSB出力にまわってしまうのか?というところ。そもそも入力と出力が同時に出来るのか?というところも。
結果はUSB入力とUSB出力は同時に出来て、USB入力音声はUSB出力にはまわらない。でもヘッドフォンではUSB入力と4chの入力を同時にモニターすることができる。利用者を考えて設計されていて一安心。注意点としてはUSB経由の入力はミキサー側で音量調整は不可能なのでPC側で調整する必要がある。ヘッドフォン出力のボリュームは調整可能。
この機能があるおかげでPCと、このミキサーだけで多重録音が簡単にできるようになる。もし出来なかったら、モニターするために、いろいろ手間がかかることになる。

USB出力の音は4chのミックスされたステレオ音
まともなオーディオインターフェイスは、ミキサーのチャンネルごとにトラックを分けてPCに送れたりするが、MultiMIx4USBは簡易的で、ミキサーでミックスした結果がステレオで出力されるだけ。個人的には2チャンネルまでの同時録音しかしないので、PANを使って左右のチャンネルに分ければ、とりあえずトラックごとに録音できる。

PCとの接続においてソフトは必要ない
これはお手軽。PCにドライバーすらインストールする必要はなく、USBケーブルを挿すだけで完了。16bit 44.1kHz固定ではあるが、アマチュア用途なら十分でしょう。どのPCでも環境を作る必要もなく、さっとつなげるので重宝している。

バンドルソフト簡易DAWが付属しない
賛否が分かれるところであるが、個人的には歓迎したい。そもそもフリーソフトのAudacityが気に入っているので、それを使うために、これを買ったようなもの。もし簡易DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)が付属していたら、Audacityから乗り換えもあり得るので、そうはなりたくなかった。DAWがないことで、迷わずAudacityを使い続けられている。基本的に生録だけなのでAudacityだけで十分なのよ。DAWがない分、価格が安い方がありがたい。


マイクプリアンプのノイズ

まず、このクラスのミキサー内蔵マイクプリアンプはおまけなので、サーというノイズはあきらめるしかない。スペックも62dBとなっているので、メーカーが「期待しないでね」と言っている。低ノイズを求める場合は最低でも5万は出さないとダメかな。10万出せば文句ないレベルまで下がると思う。米Amazonのレビューを見ると、ノイズを問題としているレビューが多い。低ノイズを求める人は、こんな廉価なミキサーを買ってはいけない。

実際にSM57で、ギターのアルペジオなんか録音すると、出音が小さいので、ミキサーでかなりレベルを上げる必要がある。そうするとノイズも比例して目立ち始める。かなり気になるレベルになってしまう。EQの高域をブーストすると、とてもじゃないが使えない。

断っておくが、出音が小さい場合だけ問題になってくるので、マイク入力でもギターストロークや歌の場合、ライン入力、エレキギターのダイレクト入力では、ノイズは許せるレベルになる。

マイク入力インピーダンスが600Ωと最近の機器としてはかなり低い。多くの機器のインピーダンスは2~3kΩぐらいが多い。ウォームな音の原因はこのインピーダンスか?

SM57を使った録音サンプル。可能な限りオンマイクにするなどノイズを低くするための工夫をしているが、そのままでは低音が出すぎるのでEQで補正するなどしている。



ファンタム電源(48V)

ファンタム電源はコンデンサマイクに電源を供給するためのもので、ダイナミックマイクには必要ないもの。個人的にはコンデンサマイクは使わないので、なくてもよいのだけど、コンデンサマイクが必要になったときすぐ使えるという安心感はある。でもスイッチは1、2ch共通で1個しかない。コンデンサマイクとダイナミックマイクの混在は、やめたほうがよさそうだ。ダイナミックマイクでもトランスがあれば、問題ないはずだが、精神的にかけたくないな。Shureの見解も曖昧だし・・・


電源関係

ポップノイズ
電源投入時のヘッドフォンから出るポップノイズはいただけない。ヘッドフォンしてから電源を入れると、かなり耳に痛い音。ボリュームを絞っておけば多少は軽減されるが・・ それでもヘッドフォンを痛めそうなので、通常はヘッドフォンを抜いている。使うときだけ電源投入後にヘッドフォンを挿す。
電源OFF時は、多少ポップ音は出るが、投入時ほどではない。
国内メーカーのものは、こんなひどくはないようだ。改造しようかな・・・

ACアダプタは交流10Vを出力するACACアダプタ

アダプターには9Vと書かれているが、ホームページには10Vと書かれている。本体の入力は10Vとなっているので、9Vは低いぞと思った。テスタでACアダプタを直接計測すると10V出力しているので問題はなさそうだ。交流だと、どこを見て何Vとするかが違うので、そういうことかな。

それにしてもACアダプターの出力が交流というのがちょっと変わっている。日本製品では普通ACDCアダプタで直流を出力する。そういえばLEGOマインドストームもACACアダプターだ。
ミキサー本体で交流を直流に変換している。本体でプラスマイナス電源を取りたくて、このような仕様になっているのかも。直流からプラスマイナス取るよりも楽なので。

使用時の電力は4Wぐらい。電源を切った状態でも1Wあった。無負荷でも1W食うのだな。ACACアダプタなので、中身はトランスだけだと思われる。無負荷でも熱に変換されているのが1Wあると考えていい。

まとめ

機能がしょぼいので、使い方をイメージしていない人だと、チャンネル数など、すぐに物足りなくなるかもしれない。あと音質も値段なり。ノイズとか音質を言い出すなら、最低10万ぐらいかけた方がよいと思う。

基本はアナログ簡易ミキサーということで、操作性は見たまんまなので悪くない。説明書がなくても困らない。普通はややこしいPCとの接続もあっけなく終わる。直感的にセッティングから使いこなしまで可能なので、初心者や機械に弱い人にはやさしい機種と言える。またPCに接続せずに単体で利用できるので用途は広い。

MultiMix 4 USBは簡易ミキサーにオーディオインターフェイスがおまけ程度に付いている機種だが、逆にオーディオインターフェイスにミキサーがおまけ程度に付いている機種もある。よりコンパクトということであれば、そういうものもいいと思う。マイク2本入力となると機種が限られそうだけど。基本性能が高い定番となるとRME社の Fireface あたりになるのかな。やっぱり10万超えだ・・・ 


Focusrite Scarlett 2i2 へ乗換え 130526

低ノイズで、マイクプリが優秀で、なおかつコンパクトなオーディオインターフェイス Focusrite Scarlett 2i2へ乗り換えた。比較するとノイズの差は大きかった。特にギターアルペジオなどの小音量での録音ではMultiMix 4 USBは厳しいと思えた。後日このミキサーは売却した。