キーボード(楽器) CASIO CTK-240

楽器のキーボードがあると何かと便利そうなので、安いものを探す。 条件としては、標準サイズの鍵盤で49鍵以上。スピーカー付でなるべくコンパクトなものがよい。そしてなるべく安価なもの。本格的に弾くつもりもないので、おもちゃ品質でも可。音も音程さえまともなら電子音的なちゃちなものでOK。音へのこだわりはほとんどない。

探してみると、1万円を切るような機種は意外と選択肢はなく、カシオのCTK-240になった。1万台になると多少はあるのだが、でかくて使いそうもない機能がてんこ盛り。ヤマハからNP-11のようなシンプルな電子ピアノ未満のような商品もあるが、ピアノ入門機的なまじめさがどうも気に入らない。
鍵盤数で一度に使える音域は限られてくるので、その辺も気になるところ。調べてみると、鍵盤数と音域は以下のような関係が主流。ただ、音色で音域が違ったり、オクターブシフトがある機種もある。

32鍵F5 ~ C8KAWAIミニピアノ 最低音guitar 1弦1fの音
F3 ~ C6CASIO SA-46、ピアニカなど
44鍵F2 ~ C6CASIO SA-76 声域をカバー ほぼアコギと同じ
49鍵C2 ~ C6CASIO CTK-240 低音楽器はC1~C5
61鍵C2 ~ C7標準的キーボードの鍵盤数
73鍵E1 ~ E7歴史的には、いろんなタイプの73鍵があるようだ
76鍵E1 ~ G7bassの最低音と同じ ピアノ曲弾くならこれ以上
88鍵A0 ~ C8ピアノ 最近は入門電子ピアノも88鍵という時代

CTK-240の音域は3種類。ほとんどの音色はギターの音域をカバーするC2 ~ C6となっている。ギターを弾く人間からすると、十分な音域に思えてしまうが、ピアノを弾く人からからすると、クラシックの曲が弾けないので不満みたい。


結局おもちゃと楽器の中間的なカシオCTK-240の中古品をゲット。

よかったところ

標準サイズの鍵盤ながら、コンパクトで2.8kgと軽い。片手で持てる手軽さ。部屋を移動するには便利。屋外に持ち出すことはないと思うが、あったとしてもギターを持ち出す感覚で抵抗はない。

実売1万円以下で安い。これ以上安い機種だとカシオの場合、ミニ鍵盤になってしまう。

ACアダプタが付属。安価な機種だとACアダプタが別売りで、しかも高額。

譜面立てがある。譜面というかメモを見ながら弾きたかったので、置けるスペースがあるというのは便利。

電源を入れれば、すぐ音が出る手軽さがいい。スピーカー付のメリット。シンセだとあれこれ接続するので、こうはいかない。とりあえずACアダプタ駆動で使うけど、電池駆動ならより使い勝手は向上する。

夜でも弾ける。ヘッドフォンで音が出せる。この手の電子楽器では当たり前のことだが、アコースティック楽器しか持っていない身としては、これは革命的? 安物バネ式鍵盤は音が静かなので、こういうシーンでは好都合。

よくないところ

ベロシティがない。ピアノのような音の強弱は表現できない。常に一定音量。

MIDI端子がない。PCと接続するような使い方は無理。

オクターブシフトがないので49鍵の範囲で弾くしかない。

上記はすべて承知の上で購入しているので問題はない。

リズムは50種類入っていて、液晶にはメトロノームの絵があるのに、メトロノーム機能がない。まじめな音楽練習用というコンセプトではないようだ。

微妙なところ

モノラル音源。ステレオ風の顔をしてモノラルというところがカワイイ。下手なステレオより好ましいと思う。ただ個人的にはスピーカーはひとつでもよかった。少しでもコンパクトな方が歓迎。

自動伴奏できる。なくてもよいのだけど、あったらあったで遊べる。

ソングが50曲も内臓。メロディーをOFFにしてカラオケみたいにできる。鍵盤初心者なので練習にはよいかも。

電源&モード切替スイッチのクリック感がなく頼りない感触。大きな問題はないが、中途半端な位置で止まったりするので、ちょっと気持ち悪いが、演奏中に切り替えるための配慮かもしれない。音がしないので、演奏の邪魔をしない?

電源を切るとボリュームを含めて設定がすべて初期状態になる。電源を入れるたびに音量、音色などを設定しなおすのが手間だが、潔い設計とも言える。逆に考えると、数年で消耗するメモリー保持用内臓バッテリーがなく、交換とか改造の心配が減るので歓迎?

デジタルボリューム。これは使い勝手はイマイチ。ボリュームステップは 0,1,2,3,4,5,6,7,8,9 の10段階しかなく、微調整ができない。また設定は保持されないので、電源を入れると毎回7からスタート。良い面としては、経年劣化でアナログのようにガリが出たりしないところ。アンプのノイズは結構ある。ボリュームは出力段階のレベルをコントロールしているのではなく、音源の出力をコントロールしているようなので、ボリュームが0だろうが、9だろうがアンプからのノイズは変わらない。つまり常に最大音量になっているようなもの。ラインで出力する場合はボリュームを最大(9)にしないと、ノイズまみれで大変なことになる。

全体的に

CTK-240はおもちゃの延長線上の楽器と考えた方がいいかも。音が出て、音程がそこそこの精度であればよいという人向き。鍵盤のバネぽっい感触やベロシティなしなので、ピアノの代わりなんて絶対に考えてはいけない。



CASIO CTK-240 仕様

発売 2010年6月
実売9000円~
中国製
49鍵 標準サイズ
100内蔵音色
最大同時発音数:12音
音域
C2-C6 標準音色 ギターの最低音よりも下
C1-C5 低音楽器 (ベースなど) 多弦ベース並みの低音が使える
C3-C7 ピッコロのみ
50曲内蔵のソングバンク搭載。楽譜集も付属
100内蔵リズム
50曲内蔵
トランスポーズ機能 -6~+5
チューニング機能 440Hz±50セント
オートパワーオフ機能 電池の場合は6分間何もしないと電源が切れる。
ヘッドフォン/アウトプット端子(ステレオ標準ジャック)
出力インピーダンス 78Ω
出力電圧 1.9V(RMS)MAX
電源端子 DC9.5V
スピーカー 10cm×2(1.6W+1.6W)
単3形乾電池×6本(マンガン電池の時、約6時間使用可能)
ACアダプター AD-E95100LJ 付属 出力DC9.5V 1.0A
消費電力 5W
サイズ 914W 237D 75Hmm
重量 2.8kg(電池含まず)
付属品 譜面立て、ACアダプター、取扱説明書、楽譜集、保証書

デザインはおもちゃ楽器にしては渋めで落ち着いたもの。

スピーカーの穴の模様は微妙な配置・・・ 開口率はかないり低いレイアウト。ホコリが入りにくいメリットはある。

パネル面

ボタンはゴムスイッチで長年使っていると接点不良を起こしやすい。表面にはホコリもこびり付き、あまり好きではない。でもボタン数が多いと、この方法が一番低コスト。

液晶表示
贅沢にも液晶が使われている。トーン、リズム、ソングなどや、テンポ、コードが表示される。ただ暗いところでは視認性が悪いのが難点。個人的には7セグLEDで十分だと思ってしまう。

10キー
こういう穴部分にはプラスチックのウエルドラインが出るのだが、シボの効果もあり、ほとんど目立たない。ひけも最小限。優秀な樹脂成形という印象。面白いのは、説明書でウエルドラインについて触れているところ。ヒビやキズではありませんとある。この手のプロダクトで、こういう説明見たのははじめて。

本体に印刷されているソング、リズム、トーンのリスト。書ききれないので、アバウトなリストになっている。

トーンリスト

リズムリスト

ソングバンク

一番大きなボタンはリズムのON/OFF。デザイン処理として関連ボタンを堀でつなぐのは分かるのだが、こういう処理はホコリとかが入りやすく、メンテしにくいのだな。

トーン、リズム、ソングバンクボタンは、色が違って目立つ。暗いところではこれぐらい目立つボタンの方が操作しやすい。このキーボードは全体的に落ちつた黒基調になっているが、どうせおもちゃカテゴリーなのだから操作性を重視して、目立つボタンで統一してもよかったと思う。


ヘッドフォン端子と電源端子 9.5V

ヘッドフォンは標準プラグ(6.3mm)のステレオ(TRSフォーン)対応だが、音源はモノラル。

ライン出力したいときも、この端子を使うことになるが、説明書には標準プラグのケーブルでアンプなどにつなぐとあるが、標準プラグの仕様については触れられていない。TSフォーンを接続するとリング(右チャンネル)とスリーブ(GROUND)がショートしてしまうが、この手の機器は問題ないように作られているはずので、TSフォーンで問題ないとは思う。実際接続しても異常はなかった。下の写真はTSフォーンプラグ。

電池ボックス

単3形電池6本だが、1本1本独立してセットするようになっている。結構丁寧な設計。


裏面は結構でこぼこしている。

スタンドを固定するためのネジ穴などもある。

刻印銘板 中国製と明記。


ACアダプタ AD-E95100LJ





ACアダプタのDCプラグ EIAJ#3 A型だと思われる。外径4.75mm、内径1.7mm、L9.5mm。断線しやすい部分。



説明書とソングブック



ソングブックは内臓している曲のメロとコードが書かれている。世界共通のようだ。主にアメリカ市場を意識した選曲に思える。やっぱりこの手の楽器はアメリカが一番売れるのかな?


肝心の音は、100音色もあるけど、音の作り方がやや雑という印象。音質でこれを買ったわけではないので、不満はそれほどないのだが、 やや見栄を張ったようなゴージャスに聴こえる音が多いように思えた。音の作り方としては素の音とエフェクトみたいな構成になっているように感じた。音によって最大同時発音数が12和音までと、6和音までがあるのだが、エフェクトの有無の差のような気がする。エフェクトがあると、処理が増えるので6和音になっているような。

説明書を見ると、いくつかの音色はデジタルサンプリングされた音のようだ。生の楽器の音を録音加工したものとある。ということはそうでない音は、基本波形を使った合成音ということかな? 個人的にはサンプリング音はあまり興味がなく、合成音が好きなので仕組みを知りたいところ。

デジタルサンプリングされた音は、ひとつのサンプリング音を複数の鍵盤の割り当てているのだが、その辺のバランスも問題を感じる音色がチラホラ。減衰する音の処理も不自然だったりする。また圧縮の関係からか全体的に高域成分がノイジーな印象。和音にすると特に気になるレベル。おもちゃキーボードのサンプリング音はちょっと辛いかもしれない。100音色もいならいので減らして、1音色にメモリーをたっぷり使って品質を上げた方がよいと思うのだが、セールス的にはたくさん音色があった方がよいのだろうね。 YAMAHAのNP-11なんかと比べてしまうと悲惨ではあるが、チープな音色を楽しめる人ならOKか?

ソングバンクの「G線上のアリア」を録音してみた。アンサンブルだと各音色の悪いところがカバーされる。録音はすべてラインでFocusrite 2i2経由で録音。ノイズを減らすためにCTK-240側のボリュームは最大にしている。


シンセリードで懐かしいヴァン・ヘイレンの「Jump」を弾いてみる。鍵盤はほとんど弾けないので、耳コピして30分ぐらい練習してみた結果だが、両手のバランスが取れず、ひどい演奏。音色は 61 Synlead2 が Oberheim の音に一番近いかなと思えた。低音のモジュレーションによるうなりは気持ちいいかも。


ビートルズの「Strawberry Fields Forever」のイントロを弾いてみる。こちらは練習なしで手さぐりで適当に弾いてみる。音色は 16 Reed Org だが、素朴な音色でCTK-240の中では好きな音色。


リズムが使えるので試してみる。鍵盤初心者は「ねこふんじゃった」からだそうなので、見よう見まねで20分ぐらい練習してみた。リズムは 34 StrtRock でトーンは 86 BrsStr を使用。ねこというより、ゾウふんじゃった的なサウンドになってしまった。


録音後にステレオにしてエフェクト(フェーザー)をかけてみる。スピッツの「エトランゼ」のシンセの音を真似てみた。音色は 64 Syn-Pad1。ギターで耳コピだとよく分からんハーモニーだったけど、音が近いとコピーしやすいのね。いろいろな音が出せるキーボードはコピー用楽器としても重宝しそう。


今回初めて標準鍵盤を入手したので、今後キーボードをちょっと練習してみようと思う。目標はコードをささっと押させることができることかな。

分解

裏面のネジをはずすだけで、簡単に分解が可能。ケースは爪もなく素直でよいね。その分ネジ本数はちょっと多いけど。

メイン基板1枚だけのシンプルな構成。

スピーカーは4Ω 3Wの素直形状。

メイン基板を眺めてみる。今回音源チップを見たかっただけなので、この基板の取り外しはしなかった。この裏にもいくつかチップがあると思われる。

コンデンサは倒されている。干渉を避けるため? やや不明。足が伸びていることで、劣化して交換する際には逆に歓迎というところか。どちらにしても中国製という雰囲気は漂う。水晶発振子も確認できる。



UTC(UNISONIC TECHNOLOGIES CO., LTD) TA8227APL とある。このチップはアンプのようだ。

音源チップは沖電気製。L6756B-22 カシオは計算機も沖電気製だった。カシオと沖電気はPCM音源を2000年ぐらいから共同開発しているようだ。

鍵盤

ケース素材は安価なPSを使用。これを見ると2011年1月に作られたケースだと分かる。

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