エレキベース 弦アース

エレキギターやエレキベースでは、ジーというノイズは付き物。 周囲の電磁波をピックアップや回路がキャッチしてしまうため。

ノイズの音をオーディオインタフェイス(Focusrite 2i2)経由で録音してみた。エレキベースはYAMAHA RBX-270。ノイズが、わかりやすいように適正レベルよりもかなり大きめに録音している。周囲にはPCとモニター、携帯電話がある。それ以外からもノイズを拾っていると思われる。リアピックアップはシングルで、フロントはハムバッキング(スプリット・コイル)。ボリューム、トーン共に全開にして録音。


ベースはスタンドに置いたままで抱えていない状態

シングルピックアップ

周波数スペクトルを見てみると60Hzが特に大きい。明らかに電源からのノイズ。

ハムバッキング

ハムバッキングの周波数スペクトルも傾向は同じだが、ノイズレベルはシングルよりも大きい。

スタンドに置いた状態は無防備に近く、シングル、ハムバッキング共に盛大にノイズが乗ってしまう。

ベースはスタンドに置いたままで抱えていない状態 手で弦に触れてみる

シングルピックアップ

ハムバッキング

ノイズの傾向は違うが、ノイズレベルという意味ではそれほど大きな差はない。弦アースを有効利用するためには抱え込む必要がある。

ベースを抱えた状態

シングルピックアップ

ハムバッキング

これだけで、ノイズが随分変化する。人体がアンテナのような存在としてある状態なので、シングルは干渉ノイズが大きくなってしまう。ハムバッキングは逆にちょっと小さくなっている。途中でノイズが変化するのはPCの操作をしたため。有線マウスを動かすだけで、そのノイズが入ってくる。

ベースを抱えて弦に触れている状態

シングルピックアップ

ハムバッキング

弦に手を触れて弦アースを有効にした状態。比較すると劇的にノイズが減っている。これが弦アースが有効になった状態で、ピックアップや回路に直接飛び込んだノイズだけとなる。ハムバッキングはピックアップに直接入ったノイズは相殺される仕組みなので、かなり低ノイズになっている。一方シングルは、ピックアップそのものは無防備なので、それなりのノイズが確認できる。

弦アースのしくみとしては、人体を弦経由でアースにつなぐことで、人体のノイジーなアンテナを、逆にシールドとして利用してしまう。シールドとしてはかなり特殊で、ベースの裏面を大きな面シールドとした状態ともいえる。また中途半端なため、向きなどでノイズは変化する。

昔から、このノイズを軽減するための策が考えられているが、ピックアップの構造を変えない限り、なくすのは困難。現状では、ハムバッキングと、弦アースが特に有効というところ。初期のエレキベースなどでは、ピックアップにカバーしているものもあるが効果は乏しく、現在ではファッション以外では使われない。

実際に使う上で考えること

ハムバッキングのピックアップは弦アースを有効にすることで、ノイズを軽減できるが、常時弦に手が触れているという条件がある。これは厄介で、瞬間的に手が離れるとジーという盛大なノイズが入ってしまう。ノイズがあまり入らない環境で演奏すれば気にならないが、現代のPCを目の前にして演奏したりするときは要注意だ。下はハムバッキングで、開放を使ったときに手が弦から離れるように音を出してみた。その後は手を弦に触れたり離したりしている。

一方シングルは常時安定したノイズ(笑)が入るので、弦アースが有効になったときとの差があまりない。適当な演奏でもノイズが減ったり増えたりしないので、楽といえば楽。上記と同じように音を出してみる。

エレクトリックベース、ギターは電気的なノイズのことも考えながら演奏しなくちゃいけないので、アコースティックとは違った面で気を使う必要がある。メーカーは、もうちょっとピックアップの原理を見直した方が良いのではなかろうか。あまりにも古典的過ぎるので。