Cakewalk by Bandlab PC4K S-Type(VCAコンプ)

CakewalkプロチャンネルにあるコンプPC4K S-Typeについて。


PC4K S-TypeはSSL(Solid State Logic社)のSL4000シリーズのモデリング


これもPC76と同じように実機があるコンプ。 SL4000シリーズは、世界中のスタジオで70年代後半から使われていたコンソール。 PC4K S-Typeは、そのコンソールのコンプ部分を切り出したものとなる。


特徴

動作原理はVCA(Voltage Controled Amplifier)コンプ。 VCAチップによるフィードフォワード方式。 音声信号の電圧から音量をコントロールし、その反応速度も速い。 名前からしてもシンセサイザーのVCAと無関係ではなさそう。 音は割とナチュラルなかかり方をするので、マスターバスに使われる。

高価なコンソールなので、操作性で妙な癖はないと思ったら、そうでもなかった。 これもPC76と同じようにスレッショルドの値が当てにならない。PC76よりもさらに混乱を招くぐらいパラメーター数値と実際のスレッショルドが一致しない。Ratioごとにスレッショルドが変わるのだ。 Ratioが3個しかないからと、なめてかかると、とんでもないことになる。

以下の絵は、Ratio2,4,10の場合で、音量が-無限大~0dBに変化する波形に対して、スレッショルドをすべて-12dBに設定して適用したもの。

Ratio2

肩が緩すぎて、どこがスレッショルドなのか不明だが、12dBよりも深いことは明らか。もしくはKneeのレベルが高い。 こういうカーブは自然な感じになる。

Ratio4

カーブを見ると普通のコンプ的なかかり方。 -9dBよりも浅いところから圧縮されている。つまり実際のスレッショルドは、設定値よりも3dB浅くなる。スレッショルドを変えてもその差は3dBのようだ。

Ratio10

このカーブはリミッティング的な使い方に適している。ピークを削るという感じ。 実際のスレッショルドは-5dBぐらい。設定値よりも8dB浅くなるようだ。これもスレッショルドを変化させても、およそ8dB差となった。

上記のスレッショルドの設定と実際の差を理解してしまえば迷うことはなくなる。これを知らないと、えっ!? てなる。


Thresh -50~0dB

スレッショルドは上記のようにRatioによって変化するので注意。


Attack 0.1~30.0msec

アタックは PC76は0.02msec~なので、比較すると遅め。アナログコンプとしては十分速い方。


Release 0.1~1.2s, Auto

リリースにオートがあるのはいいかも。リリースはソースごとに設定が変わるので、それなりの知識が求められる。 とりあえず何も考えずオートにしておけば、それほどおかしなことにならない。オートによるリリースタイムの決定は、ピークの長さに依存するようだ。


MakeUp -10~30dB,Auto

これは出力レベルだが、オートもある。Ratioとスレッショルドの設定から計算されるようだ。


S.Chain

個人的にはまず使わないだろうサイドチェイン。これをオンにすると別のトラックのレベルに応じてコンプを掛けることができる。その際HPFを使うこともできる。


まとめ

全体的にPC76よりもナチュラルな効き方と、適度なアナログの味付けもするコンプという印象。スレッショルドさえ気を付ければ、使いやすいコンプと言える。Ratio2は極端な設定にならないので、全体をまとめるには向いている。 個人的には、「高価なコンソールってこんな変なんだぁ」という楽しみ方になる。