VSTi u-he ZEBRA2 OSC FX

Zebra OSC FXの26種あるスペクトル・エフェクトを解説。

とりあえずエフェクトと勝手につけたカテゴリーの一覧
1 Fundamental 減算フィルター系
2 Odd for Even 減算フィルター系
3 Brilliance 高域ブースト系
4 Filter 減算フィルター系
5 Bandworks 減算フィルター系
6 Registerizer 減算フィルター系(オルガン的)
7 Scrambler FM系ノイズ
8 Turbulence 動的
9 Expander 倍音付加系
10 Symmetry パルスウィズ的
11 Phase Xfer FM系
12 Phase Root FM系
13 Trajector FM系
14 Ripples 共鳴
15 Formanzilla 共鳴
16 Sync Mojo ハードシンク
17 Fractalz ハードシンク
18 Exophase 共鳴(レゾナンス的)
19 Scale 高域ブースト系
20 Scatter 倍音付加系
21 ChopLift 倍音付加系
22 HyperComb 動的
23 PhaseDist FM系(PD音源)
24 Wrap 共鳴
25 DX FM系
26 Smear 倍音付加系

Zebra、Zebraletteで音作りする場合、スペクトル・エフェクトの理解が必須。 数も多く、独自名称も多いので、当然見慣れないものばかり。 マニュアルの説明も簡易的なので、結局自分で実験するしかない。

OSC FXの各エフェクト効果は、音よりも視覚的に見た方が本質を理解しやすい場合が多い。 ここではオシロスコープによる波形や、周波数スペクトルをアニメにして解説する。
サンプル音はノコギリ波に対して、100~0へまわしたときの直線的変化だけ参考程度に付けてみたが、エフェクトによっては分かりにくいのもある。

1 Fundamental(基音)

ノコギリ波で、プラスへ回したときの周波数スペクトルのアニメ。ノコギリ波なので整数倍音で構成されている。 0では基音が無く、30ぐらいでオリジナルのノコギリ波となり、それ以降基音が200%まで盛り上がっていく。倍音はほとんど影響は受けていないように見える。マイナス側は位相が違うだけで基本的に同じ動きをする。

どう使うか? 音色は倍音との関係で成り立っているので、大きく音色を変化させるのではなく、音を太くしたりするなど、音のバランスを取るために使うエフェクトと考えていい。



2 Odd for Even(奇数偶数)

偶数、奇数倍音をコントロールするエフェクト。
プラスに回すと偶数倍音を下げ、奇数倍音を強調する。 アニメは、ノコギリ波にかけたもの。また奇数倍音が下がりきっていないけど、実際0になるぐらいまで下げられる。


マイナスに回すと奇数倍音を下げ、偶数倍音を強調する。こちらも実際には、ほぼ0まで下げられる。

どう使う? 矩形波は奇数倍音で構成されているので、ノコギリ波にプラスをかけていくと矩形波へ変形する。実際には倍音のレベルの調整が必要なので、その通りにはならないが、音色を大きく変化させる場合に有効。



3 Brilliance(輝き)

このエフェクトは波形の方が分かりやすいので、オシロスコープを使用。
プラスに回すとエッジが立っていく。オリジナル波形にある倍音が強調されるわけで、元々倍音がない場合は変化がない。


マイナスに回すとエッジを丸くし倍音を少なくする。




4 Filter(LPF/HPF)

通常のアナログシンセで使われているフィルターに最も近い。
プラスに回すとHPFとして機能する。低い周波数から滑らかにカットしていくのが分かる。100まで行くと無音になる。


マイナスに回すとLPFとして機能する。高い周波数から滑らかにカットする。一般的なシンセのフィルターではレゾナンスによってカットオフ周波数の強調を行って癖を作るのだが、そういうものが全くない状態と考えていい。




5 Bandworks(バンドパス、ノッチ)

プラスに回すとバンドパスフィルターとなる。 低い周波数からスタートし、カットオフ周波数から見た特定範囲だけを残し他はカットする。+100では無音となる。


マイナスに回すとノッチフィルターとなる。 高い周波数からスタートし、カットオフ周波数から見た特定範囲だけをカットし、他を残す。-100ではオリジナル波形に戻る。




6 Registerizer(オルガン的)

C3の音のノコギリ波にかけるとオクターブ倍音だけを残し他をカットしていく。結果的にオルガン的な音になる。 マイナス側は位相の違いだけなのだが、削り方が違うので、途中の音色は違う。




7 Scrambler(FM変調フィードバック)

波形自身によって変調され、多くの非整数倍音が作れる。
ノコギリ波に対してプラスに回すと、突然非整数倍音がノイズのように発生。ただし基音は最後まで残り、音程感は存在する。


マイナスに回すと徐々に波形が変形しながら、非整数倍音が入ってくる。同じように音程感は最後まで存在する。

Zebraletteにはノイズジェネレータがないため、ノイズを作りたいときに活用できる。Scramblerだけでは基音が残ることで、音程感が出てしまうが、これを消去したい場合は、この後でFilterのHPFを通し低次倍音を消すことで音程感を軽減できる。



8 Turbulence(乱気流)

周期的に高調波をランダムにシャッフルされることで、常に動きのある状態が作られる。速度はオシレーターの解像度に依存。
ノコギリ波に対してプラスに回すと、以下のような波形となる。


マイナスに回すと、出てくる高周波も違ったものとなる。




9 Expander(エクスパンダー)

オリジナルのノコギリ波に対して-100~+100に回していったアニメ。ノコギリ波の場合、3番のBrillianceに近い動きとなるが、オリジナル波形に倍音がなくても、倍音を付加していくところが違う。
-100は倍音がほとんど削られた状態。
50ぐらいがオリジナルのノコギリ波に一番近い。
100で倍音強調。


下はサイン波にかけたもの。レベル50から100まで上げている。きれいな整数倍音というわけではなく、かなり混沌としている。


10 Symmetry(対称性)

周期の開始または終了に向かって波形を収縮させる。
矩形波にかけた場合、パルス幅の変調となる。


マイナスの場合は逆の動きとなる。




11 Phase Xfer(位相歪み)

カシオのPD(Phase Distortion)音源に近い。 0ではどんな波形もサイン波が出力され、それがオリジナル波形により変調されていく。波形を見る限りFM音源とも酷似している。


マイナスも同じ傾向。位相違いだけだと思われる。




12 Phase Root(位相特性乗算)

サイン波の位相特性をオリジナル波形で乗算。 0がサイン波で、FMチックな変調が過激に行われる。


マイナスも同じ傾向。位相違いだけだと思われる。




13 Trajector(マイルドFM変調)

サイン波をキャリアとし、オリジナル波形でFM変調する。マイルドFM変調と言っているだけに、過激な音にはならない。
アニメはノコギリ波を使っている。


マイナスも同じ傾向だが、よりダイナミックに変調されている。




14 Ripples(波紋)

波形に高調波が乗算され、特定倍音に共鳴が生まれる。-100~+100までスムーズに変化。 ノコギリ波にかけると、オリジナル波形はどこにも表れず、一番近いものが-100に現れる。そこから+100に向かって、共鳴周波数が上がっていく。
アニメは-100スタートで、+100まで。




15 Formanzilla(フォルマント)

可変高調波を乗算。いくつかの山と谷を持つフォルマントのような状態が得られる。
アニメはノコギリ波に-100~+100まで回したもの。挙動は掴みにくいが、人がしゃべっているような音を作りたいときには有効だ。




16 Sync Mojo(ハードシンク)

時間軸を収縮させ、波形をウェーブメモリに書き戻すことで、ハードシンクをシミュレートしている。
ノコギリ波を0から+100に可変した場合。動きとしてはハードシンクで100まで行くとオクターブ上となった。


マイナス場合は、オクターブ下へ向かってハードシンクが行われた。




17 Fractalz(過激ハードシンク)

-100でオリジナル波形で、プラスに振るほど高周波が増えていく。-100~+100までスムーズに変化。




18 Exophase

7ステージ・フェイザーを適用するエフェクト。
アニメは+100~-100に向けて連続的に回している。 ピークが高音域から降りてくるのが確認できる。さらにピークは3つある。

フィルター+レゾナンス的な音。これは積極的に動かしたくなる音で、シンセらしい馴染みのある音で、スウィープしたいとき使える。



19 Scale

高次倍音を2のべき乗でスケーリングするエフェクト。倍音の付加はしないので、サイン波等だと変化はない。
ノコギリ波に対して-100~+100に回していったアニメ。 -100では倍音がほとんどなくサイン波に近く、0でオリジナル波形。+100になると高次倍音が強調される。 ノコギリ波の場合、9番Expander、3番Brillianceに近い動きとなった。




20 Scatter

7番Scramblerに似ているが大人しめで、音程感はより強く残る。波形の位相はそれ自身の2乗によって変調されている。 オリジナル波形に倍音がないサイン波でも、非整数倍音を付加できる。
アニメはサイン波にかけたもの。0がオリジナル波形で、100になると高次倍音が入っているのがわかる。

マイナス側も似たような感じではあるが、位相の問題で多少音色が違ってくる。



21 ChopLift

プラス値では、すべての高調波がフェードアウトするレベルのスレッショルドを上げる。
マイナス値は、フェイントハーモニクスのレベルを上げる。
3番Brilliance、9番Expander、19番Scaleに近い動きをするが、これは、より強力で、オリジナル波形が倍音のないサイン波だろうが、豪快に倍音を付加し増強する。 アニメはサイン波にかけた場合。-100から+100へ回している。




22 HyperComb(プラスのみ動く系)

ウェイブテーブルにオリジナル波形のコピーを3つ追加し、プラスの場合、位相はランダムにシフトされ、コーラスのような動的効果が得られる。動きのスピードはResolution値で決まる。
プラス側。勝手に波形が動くので、一時停止しながらのアニメになっている。


マイナス側は、勝手に動くことはない。-100はオリジナル波形になった。




23 PhaseDist(位相歪)

80年代のカシオのシンセサイザーCZシリーズのような位相歪み。逆コサインの位相の関数として機能。
プラス側。オリジナル波形は矩形波を使用。


マイナス側。




24 Wrap

あるスレッショルド以上またはスレッショルド以下に伸びる波の部分を反転させる。 マイナス値を設定すると、複数回のラッピングの制限を大きくすることができる。
プラス側。波形の動きが分かりやすいが、スペクトルを見ると、いくつかのピークが上がっていくのが分かる。


マイナス側。プラスよりもさらに高域にピークがくる。




25 DX(FM変調)

ヤマハのFM音源を意識したFM変調。
サイン波にかけると、倍音が順次出てくるのだが、最高音が常にレゾナンスが効いた状態になり、やや混沌とする。 変化の仕方は、まさにDX7という感じ。
マイナス側は位相が違うだけで、音色的には同じように聴こえる。




26 Smear

波形を無理やり引き延ばすエフェクトで、サイン波だろうが、引き延ばされ、高次倍音を作り出すことができる。 かける波形によって、様々な変化が起きるので、試さないと予測できないエフェクトと言える。
0~100 三角波の場合、上頂点が伸ばされていく。


0~-100 三角波の場合、下頂点が伸ばされていくが、プラスほどではない。