Cakewalk by Bandlabの学習 ライブ入力PDCオーバーライド

Cakewalkをいじっていて、疑問に思ったことを実験しながら確認している最中。 その中で、わかりにくいと思えたのが、コントロールバーのミックスモジュールにある「ライブ入力PDCオーバーライド」PDCと書かれたボタン。PDCとはPlugin Delay Compensationの略のようで、日本語では遅延補正ということでよろしいかと思う。

ヘルプモジュールには以下のような説明がある。

ちょっと分かりにくいですね。 まぁなんとなく録音時の遅延補正を一時的にオフにするということは分かるのだが、遅延補正をするPDCという仕組みの中で、PDCと書かれたボタンをオンにすることで、実はPDCがオフになるというところが、おい、ちょっと待てよ!と思うわけだ。 こうなると具体的な挙動を確かめないと気が済まない。

PDCとは?

大前提としてPDCとは何のためにあるのかを知っている必要がある。各トラックに挿入されたエフェクトは、大なり小なり遅延が発生していると思った方が無難で、処理の重いエフェクトほど遅れる傾向にある。 トラックごとに使用エフェクトは普通異なるので当然遅延も違ってくる。 複数トラックでエフェクトを使っている場合、処理時間を無視して再生すれば音がズレてしまう。 そこでDAWでは一番遅れるトラックに合わせて、他のトラックも遅らせて足並みをそろえている。 遅れる時間は各エフェクトから通知されるので、それを元にDAW側が計算している。 これを遅延補正=PDCという。 このことが分かっていないと、この「ライブ入力PDCオーバーライド」ボタンは全く理解できないと思う。

「ライブ入力PDCオーバーライド」ボタンを使うシーンと目的

ギターなどを生録する際に、インプットモニターをオンにする必要がある場合。 例えばcakewalk内でアンプシミュレーター等を通した音を聞きながら演奏したいとき。 さらに別のトラックに遅延が大きいエフェクトを挿入していたとき。 そのとき録音トラックのインプットモニターから出てくる音は、 他のトラックの最大遅延に合わせた音が出てしまう。

たとえ遅延の大きいトラックをミュートしても、遅れるエフェクトをオフにしていても関係なく遅れるというところがポイント。 極端に遅延が大きいものがあれば、気づくけど、そうでもない場合は、ちょっと聞いただけでは分からないと思う。 どちらにしても演奏時の遅延は最小限が望ましい。

そこで、この「ライブ入力PDCオーバーライド」ボタンを押すとトラックごとの遅延になり、生録するトラックは最小遅延となり、演奏しやすくなる。

注意点と厄介な振る舞い

各トラックの遅延がバラバラになり足並みがそろわないので、他トラックを再生しながら録音する場合は気を付ける必要がある。

また遅延が大きいトラックのエフェクトのFXの電源を切ってしまうという方法もある。これにより、そのトラックの遅延はなくなる。

厄介なのはエフェクトを削除しても遅延情報が残っているときがある。その場合、FXをオフにするなり、しばらくいじっていると遅延が解消されたりする。

実際に確認してみる

以下のようにオーディオトラックを2個作って、トラック2に、やたら遅延するエフェクトを挿入。ギターで両方のトラックに同時録音してみる。録音されている波形はエフェクトに入る前の音なので、全く同じタイミングの音になっている。

これをPDCをオフの状態で聞いてみる。トラック1は左で、トラック2は右に振ってある。

両トラックが同時に鳴っているのが確認できる。最大遅延のトラック2に合わせてトラック1が再生されている状態。

次にPDCをオンにしてみる。

トラック1の左が先に鳴り、トラック2の右は少し遅れて鳴っているのが確認できる。 各トラックの足並みがそろっていない状態で、録音する場合は、そのトラックの最小限の遅延になることを意味する。