Cakewalk by Bandlab TTS-1 エフェクト
TTS-1に内蔵されているコーラスとリバーブは使える?
今まで、TTS-1のエフェクトは、ほとんど試さず外部のエフェクトを使っているのが現状。まともに聞いたことがなかったので、改めて聞いてみようというコーナー。リバーブ
タイプがSMALL ROOM、MED ROOM、LARGE ROOM、MED HALL、LARGE HALL、PLATEの6個が用意されていて、順にリバーブサイズが大きくなっている。調整できるのはリバーブタイム(0~127)だけ。タイプごとにアルゴリズムに大きな違いはないように聞こえるので、設定が違うだけだと思われる。またPLATEだけは全く機能していない。古いプラグインなので、こういう問題がTTS-1には少しある。下は初期設定のままかけていて、リバーブが強くかかりすぎているが、素のままということで録音してみた。強めにかけるとリバーブの質が明らかになるという面もある。- エフェクトなし
- SMALL ROOM (TIME 44)
- MED ROOM (TIME 50)
- LARGE ROOM (TIME 56)
- MED HALL (TIME 64)
- LARGE HALL (TIME 64)
- PLATE (TIME 50) 有効にならない。
リバーブには厳しめのグロッケンで試してみる。これがノンエフェクトのTTS-1のグロッケン。
特定の音域で共鳴してしまっている。こうなるとリバーブが素のグロッケンの音を壊し始めて聞き苦しくなる。
これも極端な共鳴が気になる。
共鳴も気になるが、残響も気になるようになる。
残響の響きや初期反射にディレイ感が強く出ている。解像度が低い感じ。
初期反射が強すぎるのがわかる。これを調整したいところだが、そういうパラメータがない。
上記は粗が目立つような音と使い方をしているので、印象が悪いが、うっすらリバーブをかける程度なら、それほど気にならなかったりする。ただ全体が曇り始めてしまうので、やはり昔のおまけリバーブは厳しい。 最近の優秀なリバーブに置き換えたほうが無難であることは間違いない。
コーラス
これも6個のタイプが用意されているが、パラメーターの設定違いのようだ。パラメータを同じにすれば、同じ音が出る。4つのつまみのうち、コーラス用パラメータはRATE、DEPTH、FEEDBAKの3つ。もうひとつはリバーブに送る量を設定するREV SENDとなっている。いずれもMIDIらしく0~127の調整範囲。そもそも、コーラスの役目とは? 名前の通りコーラス効果で、多重演奏的な音響効果を作り出すエフェクト。 原理的にはディレイを使って、変調させた音を混ぜている。詳しくは10年前にJavaでプログラムを組んだ時の記事があるので参照してください。 なぜ、コーラスエフェクトを使うかというと、広がりのある気持ちよい音がするからに他ならない。
ただしエフェクトによるコーラス効果は人工的な音になりやすいので、アコースティック感を出したいときは不自然になりやすいため注意が必要。逆にシンセサイザーなどの人工的な音の場合はガンガン使っている印象がある。エレキギターでも好んで使われているエフェクトではある。
下表は、各タイプごとのパラメータ設定。
TYPE | RATE | DEPTH | FEEDBACK |
CHO1 | 3 | 5 | 0 |
CHO2 | 9 | 19 | 5 |
CHO3 | 3 | 19 | 8 |
CHO4 | 9 | 16 | 16 |
FB CHO | 2 | 24 | 64 |
FLANGER | 1 | 5 | 112 |
- CHO1
- CHO1
- CHO2
- CHO3
- CHO4
- FB CHO
- FLANGER
無加工のTTS-1のストリングスの音。
もっとも控えめなコーラス。モノのドライよりもステレオ的な広がりのある音になっている。違和感が感じにくく使いやすい。
コーラス効果を増すと、人工的な感じになる。
CHO2よりもRATEが遅くなった分、幾分人工的な感じは薄れている。
CHO2よりもDEPTHが弱く、FBが強い設定。
名前の通りFBが強めなので、コムフィルタの悪い面が出てしまう音。サンプルのようなアコースティック楽器にかけると、本来の音を殺してしまうので、シンセ音や積極的な音作りをする場合に使用したほうがいい。
フランジャーとコーラスの違いはFB量にある。コーラスはつくり方によってはFBは不要だが、フランジャーには重要なパラメータ。ということで、この設定ではFEEDBACKが112と飛びぬけて高い値となっている。音は穏やかなコーラス効果ではなくなり、飛び道具的な音になっている。サンプルのような音にかけるものではない。
いずれも古典的なコーラスサウンドという感じで、やはりおまけ感が強いという結果になった。
まとめ
改めて、これらTTS内蔵エフェクトを使うことはないだろうという結論に至った。 SMFとしてリバーブも含めて完成品を作りたいというのでなければ、通常は外部エフェクタを使った方がよい結果が得られる。リバーブに関しては幸いCakewalkにはレキシコンを模したBREVERB2が付属しているので、これを使えば大きな不満はなくなるだろう。BREVERB2はcakewalk付属の機能限定版リバーブで、本来は結構よいお値段のする有料ソフト。ただで使えるけど品質は当然売り物レベルです。
音に立体感が出ている。共鳴ポイントというのはあるのだが、それほど気にならない。
ついでに所有している有料リバーブのEXPONENTIAL AUDIO PHOENIXVERBの音。意外と差は小さく感じるけど、空間演出、透明感と柔軟性は無敵で、残響のテイルは溶けるように消えていく。
コーラスに関しては、Cakewalkに高品質なものが付属しているとは言い難いので、新たにプラグインの導入を勧めたい。 個人的にお勧めするのはフリーのAcon Digital Multiply。極めてナチュラルで、アコースティック楽器にかけても問題ないという高品質なコーラスで、人工的コーラスとは真逆の存在。ただし負荷は高め。
従来の人工的で派手なコーラス効果が欲しい場合は、いろいろあるので好みでチョイスすればよいと思う。Cakewalk付属の Sonitus modulatorでも十分な仕事をしてくれると思う。Sonitusシリーズのエフェクトは、どれも地味だけど真面目な仕事をするので、割と好み。使い手が理解していないと、どうにもならないところもいいねぇ。
サンプルは割とナチュラルなところで設定。広がりは結構出ている。強烈にかけることも可能。
結局外部エフェクトを紹介して終わるという流れになってしまった。 DAW環境はフリーのものだけで、これだけの品質のソフトウェアが揃ってしまう時代。おそろしや。 ソフトウェアだけならお金をかけなくてもプロ品質のものが揃うようになってしまった。あとは使い手次第という時代に突入したようだ。