Cakewalk proCH Quad Curve EQ

打ち込みミックスでは最も使用頻度の高いエフェクト。ミックスの作業は、ほとんどEQ頼みという感じ。生楽器だとコンプも重要だけど、シンセ音源などだったら、このEQだけでも可。とにかくなくてはならいのがEQ。


プロチャンネルのQuad Curve EQはスペクトルアナライザー付きなので、波形を見ながらEQをかけられる。 見た目通りのパラメトリック4バンドとHPF、LPFがある。

良いところ

  • スペクトルアナライザーがついている。もはやデジタルEQでは付いてて当たり前という時代だが。
  • 鍵盤が上に描いてある。地味に使える。個人的には重要なところ。ちゃんと国際式でA4が440Hzになっている。

プロチャンネルのEQは全トラックにあらかじめ組み込まれているので挿入する手間もない。性能的には満足しているのだが、最近の便利機能満載の市販EQなどと比べると当然見劣りする。まぁ当たり前だけど。以下が、やや不満な点。

不満点

  • ズームウィンドウを固定に出来るが、自由な場所に配置できない。
  • 細かな調整をするには表示がちょっと小さい。
  • アナライザーの解像度が粗め。ピンポイントでカットしたいときはもう少し細かいとありがたい。
  • FIR(リニアフェーズ)ではないので位相のズレが生じる。
  • オートゲインない。
  • 特定の音域だけを聞く機能がない。

FIRは、位相が乱れないので精密な補正にはよいが、FFT処理の負荷が大で遅延も発生する。ケースバイケースで使い分ける必要があるけど、AudacityでFIRを使っていたので、やっぱりFIRがないというのはさびしい。音域の広いアコースティック楽器などに使う場合はFIRでないと位相問題が出ることがあると思う。

機能説明

ほとんどは見た目通りの機能なので説明するまでもないが、EQタイプとGlossだけは一般的ではないので書いておく。

Type



Hybrid


汎用、補正用。 ゲインのブーストとカットで非対称カーブになる。 ブーストはE-Typeと同等。カットはQが一定で最も狭く設定できる。 なぜこんな非対称になっているかというと、 カットの場合は補正用でピンポイントで下げる必要があるため。 ブーストでは基本的に広めに使う。ピンポイントでブーストするケースは普通はないと思う。

Pure


マスタリング用。Qは動的。レベルと上げるとQが狭くなり、下げるとQが広がる。

E-Type


ドラム用。昔のハードウェアがモデル。レベルにかかわらずQが一定。

G-Type


ミックス用。現代的なハードウェアがモデル。 Qカーブがゆるく動的。レベルを上げるとQが狭くなり、下げるとQが広がる。

Gloss

説明によると「ハーシュネス(高~超高音域に発生する不快な音)を発生させずに、自然な息づかいと存在感をハイエンドに追加します。」とある。 音だけ聞いてもわかりにくいので、周波数スペクトルを観察すると、わずかに高域が上がっているようだ。特に倍音を追加している様子もないが、どうかな? そして中域以下が少し下がるという感じ。

このGlossに限った話ではないが、0.数dBぐらいの差って、人間の感覚では、正直わからないと思う。音によっては目立つ場合もあるけど、そうでない場合もある。聞いただけで違いをレビューしている人も多いけど、たぶん再現性はあやしくて、条件や時間を変えると違うことを言うと思う。そのとき、そう思ったという話なので、鵜呑みにしない方がよいと思う。 一番良いのは、明らかなデータと、そのデータの特徴を経験的に言ってくれること。これは役に立つ!


まとめ

Quad Curve EQで基本的なことは全て出来てしまう。 これ以上の便利機能を求めるなら、有料の高性能デジタルEQを買うしかないと思う。 EQの使い方としては大きく分けて2種類あると思っている。その使い方でEQも2種類あるという感じ。

ひとつは補正用EQで、Quad Curve EQもこれに該当する。全体のバランスを整えるためのEQなので、本来のあり方といえる。ほとんどカットで利用するところもポイント。このカテゴリーEQは年々高性能化していて、音がどうのというよりも、視覚的に判断がしやすく効率よく作業ができる方向に進化している。ざっくりデジタルEQとか言われている。代表的なのはFabFilter Pro-Q3だろうか。あれが登場してから、似たようなEQが各社から出るようになった。

もうひとつのEQの使い方としては色付け用。これはブーストして使うことが多いと思う。現在人気なのは往年のハードウェアのエミュレート系だろう。サチュレーション効果があったりとか、一癖ある気持ち良い音を目指す方向。上記のデジタルEQだと、ただ単に帯域が上下するだけで色付けはできない。色付けはプロフェッショナルな世界の話で、特にアコースティックをプロスタジオで本格的に録音した場合に使用するイメージ。なので個人的には関係ない世界。基本的には上記の補正をしっかりできていることが大前提となるので、デジタルEQを使いこなしてから踏み込むべき世界。順番を間違えたら大変なことになる。