Reaper ReaLimit(Cockos)(VST)


本日はじめてReaLimitを使ってみる。 まずはパラメータ値と挙動の確認。パラメータが少ないと攻略が楽で助かる。 こういうプラグインは、どう動くかを理解しないと使いこなせないと思っている。

そういう意味ではブラックボックス化されたプラグインは困る。何が起きているか分からないので、精密なコントロールは無理。 iZotopeのプラグインの多くは、お任せ部分が多くて、個人的相性が悪いと思っている。 Ozone 9 Elementsを持っているので、たまにマキシマイザーを使ってみるのだが、IRCとか謎パラメータとかあって、どうしようもない。 ただiZotopeプラグインは、どれも高性能で、びっくりするほどの結果を出すときがあるが、びっくりするほど負荷が高く、レイテンシーもある。 今回はOzone、LoudMax、Wave Breaker、その他マキシマイザーとReaLimitを比較しながら試してみる。

ReaLimitの概要

Reaperの標準エフェクトは、どれもちゃんとした説明がなく、適当にいじって理解するしかない。 第一印象はマキシマイザーとしても使えるリミッターという感じなのだが、 結構使えそうな挙動を示したのでBlogで取り上げてみたという次第。 まずはパラメータの確認。

Threshold(12~-60dB)

圧縮する閾値をdB単位で設定。リミッターなので、レシオは無限大となっている。 グラフィカルなメーターの赤ラインなので、視覚的にもわかりやすい。

Brickwall Ceiling(0~-24dB) / True peak

出力の最大レベルを設定。これを超えることはない。またTrue peakをチェックするとサンプル間までも含めてピークを計算するので、リサンプリングや圧縮フォーマットに変換した時にもピーク値が保証される。音楽の場合、通常は-1~-3dB程度でよいかと思う。 またThresholdと同じ値にすると、圧縮後に音量が拡大されることはないので、何が起きているかのチェックが簡単に行える。

True peakって何?

下図はTrue Peakの説明用のスクリーンショット。
1段目は、サンプリング周波数22050Hzのオリジナルでピークが0dBとなっている。
2段目は、1段目を48000Hzにリサンプリングしたもの。赤丸のサンプルが0dB以上となってクリップしている。プラス側も少し飛び出ているのが確認できる。このようにリサンプリングするとサンプルとサンプルを補間するので、ピークが大きくなることがよくある。
3段目は、True peakをオンにして、同じように1段目を48000Hzにリサンプリングしたもの。ピークが0dB以下にとどまってクリップしていないのが確認できる。
またMP3などに変換するときも同じようにピークが変化するので、True Peakは便利かもしれない。 True Peakを使わない場合は-3dB程度にしておけば、クリップすることはほとんどないと思うので、必ずしもTrue peakは必須ではないと思っている。 このような安全機能は歓迎だが、最も重要なのは、こういう現象が起きるということを知っていること。


Constant gain

ThresholdとBrickwall Ceilingを連動させる。音量感を一定に保たせる工夫だと思うが、リミッターではなかなか難しいので、基本オフで使うことになりそう。

Release(inf~6dB/sec)

ReaLimitの中で一番風変わりなパラメータかもしれない。これはThreshold以下になったときに、どれぐらいまで圧縮作業を続行するかを決めるパラメータ。普通は時間だけを指定するのだが、ReaLimitでは直前に圧縮率も考慮している。 例えば15dB/secに設定していて、6dB圧縮を直前までしていた場合は以下のような計算式になると思われる。
1sec/(15/6dB)=0.4sec
上の半分の3dBだった場合は次のようになり、復帰する時間も半分になる。
1sec/(15/3dB)=0.2sec
このように圧縮率に応じてリリースタイムが変化するので、より自然なリリースタイムとなる。
リリースの戻り方は下波形のように直線的。Reaperのエフェクトは割と直線的なものが多い。何よりも計算コスト優先という感じ。実際短いリリースタイムであれば、カーブの差はあまり分からないと思う。LoudMaxも同じだった。

ちなみに下はOzoneの波形。有料プラグインのリリースはアナログを模したものが多いので、こういう形で戻るものが多い。 無料だがWave Breakerも同じようなカーブを描いた。 カーブの曲線は様々だが、どちらにしてもリリースというものが不自然であることに変わりないので、好みの範囲だと思う。 ある程度リリースタイムが長くなると、音源によってはカーブの形が結構影響してくる。 リリースの役割は音質を変化させないためのもの。音源によってリリースタイムは決まる。



ReaLimitは歪まない

下はサイン波に-9dBのThresholdをかけたもの。青が元々の波形でピンクがReaLimitをかけた後の波形。 波形が圧縮される際に1波形目から形が崩れず圧縮されているのがわかる。先読みして圧縮していてるので、Thresholdに引っかかる前の波形も圧縮されているけど、いずれも波形が崩れないため、妙な歪成分が入らない。LoudMax、Wave Breakerもほとんど同じ傾向を示した。


iZotope Ozoneでは以下のようになった。さすがです。Thresholdにかかった波形のみ圧縮。

多くのプラグインでは頭の波形は下図ぐらいは歪む。

マキシマイザ系の中身はデジタル先読みコンプなので、歪は軽減できるのだけど、多くは歪むようだ。 歪んだところで、聞き取れないぐらい微妙なところなので問題にはならない。また優劣が決まるわけでもなくアナログ系コンプは100%歪むし、それがよいとされることも多い。問題があるとすれば、使い方の方だと思う。そのためにもプラグインの傾向をつかんでおいた方がよいと思っている。

個人的にマキシマイザ系はマスタリング工程での音量調整に使いたいので、色付けはしてもらいたくない。そういう意味ではReaLimitはOzoneの代わりになりそうという印象になっている。Ozoneを使えば?という考えもあるが、相性があまりよくないのだね。特にAIとか不要。また基本プラグインセットという感じなので、使わないものが多量にあったりするし、バージョンアップが割と頻繁にあって、さらに結構高い。保守料金で儲けている感じがして、どうも会社の姿勢も好きではないのだな。確かに性能は素晴らしいとは思うのだが・・・

録音直後にも使える

ReaLimitは歪まないので、ギターなどで、ところどころ極端なピークが出てしまったような音源で、邪魔なピークをカットする用途でも使える。 下は-3dBでカットしたところ。


ファーストインプレッション

思ったよりも使えるという印象で、その特性を理解していれば、Ozoneの代わりにもなるかもしれない。 何よりも負荷が軽いので、マスタリングの最後で使うだけでなく、各トラックのピークカットなどで重宝しそう。