英式バルブ

国内では自転車のバルブと言えば、この英式バルブ。スポーツ車以外は、ほとんどこのバルブが使われている。 ダンロップによる考案のようだ。考案時期はちゃんと調べていないが、1800年代後期だと思われる。つまり100年以上前のものが、ほとんどそのまま使われていることになる。

それだけの歴史があると呼ばれ方も様々で、以下のような名称が使われている。

English valve 英式バルブ
Woods valve ウッズバルブ
Dunlop valve ダンロップバルブ

特徴

メリットとしては、構造がシンプルで、壊れにくく、安価に作れる。また消耗品(虫ゴム)の交換も特殊な工具を必要とせず手で組立が可能。
デメリットとしては、高圧には耐えられない。およそ300~400kPa程度での使用が前提らしい。 また構造上、空気の流れが一方通行なので空気圧測定ができない。 ポンプで空気を入れるときは、虫ゴムを圧力でこじ開けるようにして入れるため、余計な力が必要で重く感じる。

ママチャリの古くなったチューブを切ってみたので、英式バルブを観察してみる。規格としては日本ではJIS D9422[自転車用タイヤバルブ]に規定されている。ネジ径を調べてみるとバルブ外周のネジはCTV8山30 ピッチ0.8466mm、ネジ外径8.1mmだと思われる。インチねじの特殊なものになるので、専用と考えていいぐらい。代替パーツがないというのは何かと細工がしにくい。 リムナットの二面幅は10mm。

キャップを外す。キャップ部のネジも同じく特殊で、CTV5山24 ピッチ1.0583mm、ねじ外径5.1mmだと思われる。



トップナットを取る。プランジャーが挿し込まれているだけ。バルブ内部にはテーパーが取られていて、トップナットを締めることで、虫ゴムが潰されて空気が漏れないようになっている。そのため手でぎゅっと締める程度が適度。工具で力任せに締めると虫ゴムが千切れて空気が漏れてしまう。またバルブの切れ目があるのは、プランジャーが回転しないため。もしこの溝がなかったらトップナットを締めたときに、プランジャーが回転してしまい、虫ゴムが簡単に千切れてしまう。

各パーツを並べる。上からキャップ、トップナット、プランジャー(虫ゴム付)、リムナット、バルブ。各パーツはシンプルで壊れる要素は見当たらない。消耗品である虫ゴムの交換だけすれば、トラブルとは無縁。

プランジャ。虫ゴムを着けたものと、取り除いたもの。タイヤ内の空気が漏れないのは、この虫ゴムがプランジャとバルブの隙間を埋めているから。 ただ劣化しやすい素材なので、個人的には半年ぐらいで交換しているパーツ。

逆に空気を入れるときは、ある圧力以上で、ゴムが耐えられなくなり、ゴムをこじ開けるようにして、タイヤ内に空気が入っていく。プランジャーにある小さい穴にかぶっているゴムの力以上の圧力が必要なため、ある意味無駄な力が必要になる。他の仏式や米式バルブは、タイヤ内の空気圧以上の気圧にすれば、空気が入っていくので、無駄な力は必要なく、スムーズに空気を入れることができる。

1年も使っていると虫ゴムはバルブとの接点に亀裂が入ってくる。

チューブ内側から。バルブ周辺はゴムが厚くなっている。チューブ内部はゴムが貼り付かないように白い粉がみられる。

子供のときから慣れ親しんでいる英式バルブをじっくり眺めてみたのだが、よく出来ていると思う。改善して欠点を克服することもできるが、このシンプルな構成を、そのまま使う方が個人的には好き。 やるなら虫ゴムの材質を耐久性の高いフッ素系やシリコーン系にするぐらいだろうか。そうすれば交換頻度もかなり減ると思うのだが、やっている人はいないのかな? 硬度の問題もあるので、都合のよいものを探すのは苦労するかもしれない。