VSTi u-he Zebralette Waveform
ウェーブテーブルとは
古典的なアナログシンセのオシレータは、ノコギリ波や矩形波などを切り替えながら出力し、それをフィルターで削ることで音色を作る。オシレータの波形そのものは基本固定である。一方、ウェーブテーブルという考え方は、80年代初期にPPG社 Wave2.2が採用したことで、ポピュラー音楽で使われるようになった。仕組みとしてはデジタルで1周期分の波形複数を1セットとして持ち、 そのセット内の波形を順次切り替えながら発音する。 波形は外部からサンプリングしたものを使うことで、アコースティックぽい音の再現も可能になったが、やはり本物とは全く別物だった。 当時の限られたメモリと処理能力の中での工夫の産物であり、それが独自の音を築いた。
Zebraletteのオシレータは、このウェーブテーブルが基本となっていて、16個の波形を持っている。
一見少ないように思えるが、波形と波形の間も自動で補間されるため、スムーズな音色変化が可能。 アニメはウェーブテーブル1番三角波と2番矩形波を行き来していてモーフィングされているのがわかる。 数値も1.00~2.00に変化。 グレーの線が出力波形となる。 アニメは適当に作ったものなのでモーフィング中の波形は現実的ではない。 理想的なモーフィングを実現するためには、ハンドルという点の数や位置、曲線などを利用してスムーズになるように調整する必要がある。
16個の波形のコントロール方法
Wave(1-16)ノブの設定値と、その下の制御ノブ(-16~16)で16個の波形を操作する。いくつか例を示すと
- Waveが1で、制御ノブが0の場合は、1番の波形が固定で使われる。
- Waveが1、制御ノブが16、MSEG1の場合は、1番から16番の波形が使える。MSEGグラフの上が16番で下が1番となる。
- Waveが16で、制御ノブが-16の場合は、16番から1番の波形が使える。MSEGグラフの上が1番で下が16番となる。
波形の制御はMSEGが便利だと思うが、LFOでも可能。注意点としてはLFOはWave値を0基準として、プラスにもマイナスにも動くので、Waveは真ん中あたりを指定した方がいい。 振幅の設定は制御ノブとLFO1の場合DEPTH MODで決まる。余裕をもって狭めに設定した方がうまくいくようだ。
Wavetableの入手と保存
簡単なものなら自分で作れるが、u-heのページで提供されているOSC(ウェーブテーブル)があるので、これを利用するとよい。https://u-he.com/PatchLib/zebra.html
また1からウェーブテーブルを作りたい場合は、こちらのツールを利用するといい。
作ったウェーブテーブルの保存は、OSCのPresetsボタンを右クリックすると、コンテキストメニューが出てくるので、ここで保存する。
使い方は様々
16の波形を持っているので、これを順次鳴らすこともできるし、特定の部分だけを繰り返すこともできる。また1つの波形だけを使ってアナログシンセのオシレータのようにして使ってもいい。 いくつか代表的な使い方を示す。減衰する音
PPG Waveが脚光を浴びた理由はシンセでアコースティックなリアルな音が出せるという側面が大きかったと思う。例えばピアノの音を作りたい場合、丸々サンプリングするほどのメモリはないため、工夫が必要になる。 ピアノの音はアタックに多くの複雑な倍音が含まれていて、その後、倍音の少ないおとなしい音となり減衰していくという特徴がある。 これをウェーブテーブルで実現する場合は、出だしだけサンプリングしたまんまの音を使って、大人しい音になったら同じ音をループしながら減衰させていけばいい。こうすれば少ないメモリでもそれっぽい雰囲気は出せる。 アニメは最後の白点で止まっているけど、実はここでループしている。音サンプルはピアノぽくしてみた。
アタックの特徴がある持続音
例えば管楽器や弦楽器などをイメージ。これもピアノに近い方法だが、違いは持続音にすることができるという点。ループのときに、減衰ではなく音量を維持し続ければいい。そして音を止めたときに、やんわり響きが残るようにリリースするとそれっぽくなる。音色制御はMSEGを使ってループを使用。白いハンドル間をループして、鍵盤を離すと、リリースに応じてその後へ移動。上が倍音が多く、下はサイン波に近い。
音サンプルはチェロぽくしてみた。