VSTi TAL U-NO-62
(Roland Juno-60 アナログシンセ)
アナログシンセの構造を少し理解しておこうということで、なるべくシンプルな操作性のフリーVSTiを探す。
KVRサイトを眺めてもアナログ系は膨大にあるので、選択に迷うところ。
以前Moog系を試したので、今回は違うポリフォニックのものにしたい。
条件としては、Cakewalkで使うのでWin64bit限定。またSynthedit、SynthMakerなどではない独自に作られたもの。パラメータをMIDI(cakewalk)でコントロールできることなど。
とりあえず実機があるシンセに絞り込み、ポピュラーなものということで、TAL社(スイス)のU-NO-62というものにしてみた。 RolandのJuno-60(1982年)をモデルとしていて、パラメータが少なめなのがいい。 音は今風シンセと違って、80年代初期という感じの古い電気楽器的な音。チープな感じが逆に新鮮。Rolandからマニュアルもダウンロードできるので、パラーメータの動きも理解できると思われる。
U-NO-62はTALのフリーシンセとしては古いもので、今から10年前の2008年で開発も終了している。 サポートもないし、マニュアルもない状態。本当は開発が継続している同社のNoiseMakerを使った方が無難なのだろうけど、操作が簡単そうという理由から、今回はこちらを使ってみた。
DL size: 327KB
VST2
32bit/64bit
https://tal-software.com/products/tal-u-no-62
Polyphonic (6 voices)
Bandlimited oscillators
One syncable LFO with five different waveforms
24 dB lowpass filter with self oscillation, non-resonant high-pass filter
Fast ADSR envelopes
Smooth cutoff changes (also with midi controllers)
Velocity sensitive filter envelope
Midi learn for all potis
Supports all sample rates
20 Presets.
TALにはマニュアルがないんで、Roland Juno-60のマニュアルを参考に、いじりながら動きを確認してみた。 U-NO-62は、実機と比較するとアルペジオなどの機能は省かれている。 ソフトウェア音源ということで多少パラメータも違うようだ。 実機は知らないが、音は結構忠実に再現されているらしい。 有料のTAL U-NO-LXというソフトシンセもリリースしているのだけど、有料版は完全再現らしい。開発者はJuno-60に相当思い入れがあるっぽい。
サービスノートのブロック・ダイアグラム
まずは音声信号がどこで作られ、どう処理されて、出て行くのかを理解する必要がある。 アナログシンセの基本はほとんど同じで、 DCO(VCO)で作られた波形が、VCFというフィルターで音色が加工され、VCAというアンプで時間的に音量調整がされるという具合。 またLFOは低周波の揺れを作り、ENVは時間に対してのレベル(音量、周波数)を作って、DCO、VCF、VCAに送って 音声信号に変化を与える。 HPFとCHORUSはエフェクトなので、シンセの本質部分とは違う。続いて各ブロックの役割を左上から順に見てみる。
独自部分。
ベロシティはENVのレベルに効いてくる。 ENVをVCAにかけている場合は、単なる音量差の変化なので理解しやすいが、フィルターにかけている場合はちょっとややこしい。 その場合ベロシティで、フィルターのカットオフ周波数がコントロール出来る。鍵盤を強く弾くとカットオフポイントが上がり、弱く弾くとカットオフ設定値になるようだ。ベロシティを無効にしたい場合は、一番下まで下げればいい。注意点としてはVCFのFREQを最大にするとポイントが上がりようがないので効果がなくなる。
VOICESは同時発音数の調整。1~6に設定できる。1にするとモノフォニックになるが、ポルタメントになるわけではないようだ。 つながった2つ目の音のアタックがなくなるわけでもない。
PANICボタンは、現在鳴っている音を強制的に止めるボタン。音が止まらなくなった場合の非常停止ボタンとして使う。今のところそういう非常事態になったことはなく、安定している。
BBD素子を利用した独特なステレオコーラスのシミュレート。ⅠとIIがあり順に効果が深くなる。同時押しすると回転スピーカーのような効果が得られる。 回路的には、コーラス手前までがモノラル処理で、コーラスのところでステレオ化する。 TALには、この部分だけを抜き出したVSTe(エフェクト)もある。派手にかかるコーラスは結構気持ちいい。下にサンプルを作ってみた。有名な曲の冒頭。
ドライサウンド
コーラスI
コーラスII
コーラスI+II
PITCH/WHEEL:キーボードのホイールの感度調整。キーボードを持っていないので未確認。
TUNE:音程の微調整を行う。プラスマイナス半音の調整が可能だが、表示もセンタークリックもないので、チューナーを使って合わせるしかない。デフォルトではぴったし440Hzなので、問題ないが、誤って動かしたら、440Hzに戻すのは結構大変な作業となる。440Hzで問題ない場合は、決していじってはいけないノブ。
VOLUME:最終的な音量をここで調整する。
スライドスイッチ:オクターブトランスポーズ。3点あり、左から低(DOWN)、中(NORMAL)、高(UP)の順になっている。
ML/G-MLボタン:これは多分MIDI Learn。その手の機器を持ち合わせていないので、未確認。
低周波を作り出す部分。
RATE:揺れ時間の調整。
DELAY TIME:どれぐらい遅れてから揺らすかを設定する。
TRIG MODE:Autoにすると、音の鳴り始めが常に初期状態から始まり、OFFにすると、音の鳴り初めに関係なく音が揺れる。下サンプルは始めはAutoで、その後OFFにしている。
WAVE:独自機能で、sin、tri、saw、rec、noiseから選べる。下は矩形波にLFOを適用して順に鳴らしたもの。LFOの深さは最大の2オクターブにしている。最後のノイズだけは、RATEを速くしている。
WAVE TEMPO:独自機能でシーケンサーのテンポに合わせて揺れを決定することができる。
Juno-60はアナログオシレーターではなくデジタルなので、よく見かけるVCO(Voltage Controlled Oscillator)や、OSC(Oscillator)ではなく、デジタルを強調したDCO(Digital Controlled Oscillator)という名前になっている。ただ今風のデジタル波形をDACで変換するという構成ではなく、アナログ信号をデジタルスイッチで制御しているというオシレータ。これはアナログシンセと言い切ってもいいと思えてしまうが、当時はデジタルが売りになったのだろう。現在ではアナログが売りになるのだから面白い。
LFO:深さを調整。すべての波形に適用される。最大の深さにすると音程的には弾いている音に対して±1オクターブで、2オクターブの揺れになるようだ。
PWM(Pulse Width Modulation): このスライダーは横のスイッチによって動作が異なる。これはパネルの線の通り矩形波専用で、ノコギリとサブには影響しない。
OFFの場合は、下のようにパルスウィズが変化する。サンプルは下から上へスライドした時の音。
スライドが下の場合、デューティ比50%
スライドを一番上にするとこんな形になる。
LFOの場合は下図のように矩形波のパルスウィズがLFOの影響を受けて変化する。
LFOがOFF(パルスウィズ固定)の場合と、ONにした場合の違い。LFOの周期に合わせてデューティ比が繰り返し変化しているのがわかる。 ピッチが変化しているわけではない。
ENVの場合は下図のように矩形波のパルスウィズがENVの影響を受けて変化する。
ENVがOFF(パルスウィズ固定)の場合と、ONにした場合の違い。VCAをGATEにしているので、OFFだとすごく単調な音。ENVをONにするとピッチの揺れとは違う複雑なうなりのような音が生まれる。ENVなので、繰り返すことはなく出だしだけが変化する。
中央の3つのボタンは波形のON/OFF
矩形波、調整不可のノコギリ波、サブのオクターブ下の矩形波となっている。 Juno-60は1オシレータなので、メイン矩形波以外は、バリエーションと考えてよさそう。
ノコギリ波とサブは、メインの矩形波から作られているので、各パラメータの影響を受けている。 ノコギリ波はON/OFFだけ、サブはレベルのみ調整可能。下サンプルはノコギリ波。
NOISE:ホワイトノイズのレベル調整。ON/OFFはない。 LFOとVCFなどの設定は適用される。ほかのOSCと同じ設定になってしまうので、細かな調整はできない。 下サンプルはノイズ。
ホワイトではあるが、下のように周波数特性を見るとハイが緩やかに削られた感じで、あまり耳に痛くない。
ハイパスフィルタで低音をカットする。 カットオフ周波数を設定できる。 シンセではあまり見かけないフィルタ。
下はHPFのカットオフ周波数を最大にしてノイズをカットしてみたところ。周波数特性を見ると、中低域はがっつり削られるので、低音楽器を邪魔したくないときに使うとよいかもしれない。
FREQ:カットオフ周波数の決定を行う。レゾナンスとのコンビで、アナログシンセにとって一番おいしい部分。基本的にはLPF(ローパスフィルター)の原理で、高音域を遮断する周波数を決めるところ。切った部分の周波数は盛り上がりやすく、特徴的な音色になる。その調整は下のレゾナンスで行う。
下サンプルはカットオフ周波数をいじっている。
RES:レゾナンス。カットオフ周波数付近を強調する。ジュワーとかビヨーンとか、アナログらしい音を作ることができる。
VCF ENV POLARITY:上下のレバーでNORMAL(上)とINBERTED(下)が選べる。下にするとENVが逆さまになる。
通常はノーマルで使うが、効果音的音や、ちょっと不思議な音を作るときはインバートする。 VCFにENVを適用するので、FREQをENVに従って上下する動きになる。ノーマルの場合は、設定したFREQに対して上方向にいじれる。インバートの場合は、下方向にいじれると考えてよいと思う。ENVの設定と視覚的に逆の動きになるので、やや慣れが必要というところ。 またENVのS、サスティーンに関しては、FREQの基準値を変化させてしまうため、注意が必要。ENVは通常VCAにも適用するので、常に0というわけにはいかないだろう。そんなこともあってか、最近のシンセはENVが2個以上あったりする。
Juno-60のプリセットでは、いくつか該当する音がある。 下サンプルはSpace Sound1の音。あるアニメ映画の冒頭の音ぽかったので、真似てみた。故キース・エマーソン。
ENV:ENVの感度を調整。FREQ(カットオフ周波数)のポイントがENVに沿って変化する。
LFO:LFOの感度を調整。FREQ(カットオフ周波数)のポイントがLFOの周期に沿って変化する。
KYBD:やや挙動が不明のスライド。マニュアルにはキーボードの感度を調整。音の高さによって倍音成分が変化するのを防ぐ。通常は最大にして上げて使われるとある。
実際試すと、最大にすると低域はこもりがちになり、最小にすると高域がこもる。使いたい音域に合わせて、調整するしかなさそう。
VCFのトリッキーな使い方としてRESを全開にしてオシレータなしで、VCFを発振させて共鳴音だけで音階を出すことができる。Juno60のホイッスルの下サンプルなどがそれ。音が伸びると下がっていくし、パラメーターの位置で音程は変化するし、きれいな音階にもなりにくい。扱いにくいが面白い。
時間的な音量を調整するアンプ部。
E/Gスイッチ:ENVかGATEを選択できる。 ENVにするとエンベロープの設定に従って音量が時間的に変化する。 GATEは時間的に音量は変化せず、鍵盤のON/OFFに反応するだけのモード。
LEVEL:音量の調整。
ADSR(Attack、Decay、Sustain、Release) 多くのシンセで未だに使われているパラメータ。音の時間的に変化するダイナミクスや、フィルターのカットオフ周波数を調整したりする。Sは時間ではなく鍵盤を押して安定した状態のレベルを表し、音量、カットオフ周波数などに変化を与える。
下サンプルはVCAにENVを適用した例で、はじめにENVなしのビープ音で、次にENVをかけたもの。ENVのパラメータはADSRすべて4にした。
波形を見るとよくわかる。
下サンプルはVFCのカットオフ周波数にENVを適用した例。はじめにENVなしのビープ音で、次にENVをかけたもの。 ただのビープ音が、ビョワーンという音になっている。最後の方の音は元のビープ音になっているのが分かると思う。
Juno-60のマニュアルを見ながらプリセットを作ってみた。実機の動画を参考に、音をそれっぽく近づけてみた。パラメータの調整次第で、結構近い音が出る。fxbファイルにまとめた。U-NO-62のプリセットの後にJuno60のプリセットが入っている。
juno60_preset.fxb
下は実際に試した結果。いくつか不明なものがあったり、機能しなかったり、またすべてのつまみやスイッチに割り当てられているわけでもないようだ。必要に応じてオートメーションで操作すればよいということだろう。名前が一致していないので、何とも使いにくい。
アナログシンセは音の変化がイメージしやすい(口で言いやすい)ので扱いやすい。FM音源とはえらい違い。 なので弾きながらでも音を変化させられる。アナログシンセは、そういう使い方をすることが多いのもうなずける。結果的に音作りの時間がFM音源よりも短くなる。あと限界も見えやすいので、これ以上は無理と判断できたりもする。アナログシンセは人間にやさしいようだ。
ソフトシンセ全般に言えることだが、プリセットだけ選んで使うならまだしも、音を自由に作れるようになるには、ある程度中身から理解が必要。そうなると、あれもこれも使うわけにはいかず、どれかに絞り込んで使いこなすことになる。 ハードであれば、設置の問題から、自ずと絞り込むことになるが、ソフトでは際限がなく性質が悪い。 個人的にはソフトシンセはdexedだけで十分で、U-NO-62はアナログの操作性(パラメータ変化)がほしいときに使うぐらいになりそう。ただ、ポルタメントできなかったり、古典的なシンセなので音作りの自由度は、あまり高いとはいえない。それでも独特な愛嬌がある音なので結構気に入っている。
とりあえず実機があるシンセに絞り込み、ポピュラーなものということで、TAL社(スイス)のU-NO-62というものにしてみた。 RolandのJuno-60(1982年)をモデルとしていて、パラメータが少なめなのがいい。 音は今風シンセと違って、80年代初期という感じの古い電気楽器的な音。チープな感じが逆に新鮮。Rolandからマニュアルもダウンロードできるので、パラーメータの動きも理解できると思われる。
U-NO-62はTALのフリーシンセとしては古いもので、今から10年前の2008年で開発も終了している。 サポートもないし、マニュアルもない状態。本当は開発が継続している同社のNoiseMakerを使った方が無難なのだろうけど、操作が簡単そうという理由から、今回はこちらを使ってみた。
TAL(スイス) U-NO-62 主な仕様
dll size: 1499KBDL size: 327KB
VST2
32bit/64bit
https://tal-software.com/products/tal-u-no-62
Polyphonic (6 voices)
Bandlimited oscillators
One syncable LFO with five different waveforms
24 dB lowpass filter with self oscillation, non-resonant high-pass filter
Fast ADSR envelopes
Smooth cutoff changes (also with midi controllers)
Velocity sensitive filter envelope
Midi learn for all potis
Supports all sample rates
20 Presets.
TALにはマニュアルがないんで、Roland Juno-60のマニュアルを参考に、いじりながら動きを確認してみた。 U-NO-62は、実機と比較するとアルペジオなどの機能は省かれている。 ソフトウェア音源ということで多少パラメータも違うようだ。 実機は知らないが、音は結構忠実に再現されているらしい。 有料のTAL U-NO-LXというソフトシンセもリリースしているのだけど、有料版は完全再現らしい。開発者はJuno-60に相当思い入れがあるっぽい。
Roland Juno-60について
実機を軽く調べてみた。1982年発売の1オシレータのアナログシンセ。定価は238,000円。 ポリシンセとしては、当時はこれでも安い方。 すでにデジタルの波は押し寄せていて、このモデルもオシレータはデジタルとなっている。 ただ波形をデジタルで保持しているわけではなく、波形を作るスイッチにデジタルを使っているらしい。のこぎり波などはコンデンサを使ったりしているので、個体差はあるだろう。 この後にYAMAHAからDX7が発売され、一気にデジタルシンセの時代に突入する。 実機があるメリットとしては、マニュアルがあることや、情報が結構あったりする。Juno-60に関してはサービスノートも入手可能で、内部の回路図まで眺められる。サービスノートのブロック・ダイアグラム
ブロック・ダイアグラム
サービスノートを参考に、U-NO-62の区分けでブロック・ダイアグラムを描いてみた。 音声信号と制御信号の流れを把握することは重要なこと。ブロック図を頭に入れてからパラメータをいじらないと、何をしているのか分からなくなるので。まずは音声信号がどこで作られ、どう処理されて、出て行くのかを理解する必要がある。 アナログシンセの基本はほとんど同じで、 DCO(VCO)で作られた波形が、VCFというフィルターで音色が加工され、VCAというアンプで時間的に音量調整がされるという具合。 またLFOは低周波の揺れを作り、ENVは時間に対してのレベル(音量、周波数)を作って、DCO、VCF、VCAに送って 音声信号に変化を与える。 HPFとCHORUSはエフェクトなので、シンセの本質部分とは違う。続いて各ブロックの役割を左上から順に見てみる。
CONTROL
独自部分。
ベロシティはENVのレベルに効いてくる。 ENVをVCAにかけている場合は、単なる音量差の変化なので理解しやすいが、フィルターにかけている場合はちょっとややこしい。 その場合ベロシティで、フィルターのカットオフ周波数がコントロール出来る。鍵盤を強く弾くとカットオフポイントが上がり、弱く弾くとカットオフ設定値になるようだ。ベロシティを無効にしたい場合は、一番下まで下げればいい。注意点としてはVCFのFREQを最大にするとポイントが上がりようがないので効果がなくなる。
VOICESは同時発音数の調整。1~6に設定できる。1にするとモノフォニックになるが、ポルタメントになるわけではないようだ。 つながった2つ目の音のアタックがなくなるわけでもない。
PANICボタンは、現在鳴っている音を強制的に止めるボタン。音が止まらなくなった場合の非常停止ボタンとして使う。今のところそういう非常事態になったことはなく、安定している。
CHORUS
BBD素子を利用した独特なステレオコーラスのシミュレート。ⅠとIIがあり順に効果が深くなる。同時押しすると回転スピーカーのような効果が得られる。 回路的には、コーラス手前までがモノラル処理で、コーラスのところでステレオ化する。 TALには、この部分だけを抜き出したVSTe(エフェクト)もある。派手にかかるコーラスは結構気持ちいい。下にサンプルを作ってみた。有名な曲の冒頭。
ドライサウンド
コーラスI
コーラスII
コーラスI+II
PITCH / WHEEL / TUNE / VOLUME / スライドスイッチ(オクターブトランスポーズ)
PITCH/WHEEL:キーボードのホイールの感度調整。キーボードを持っていないので未確認。
TUNE:音程の微調整を行う。プラスマイナス半音の調整が可能だが、表示もセンタークリックもないので、チューナーを使って合わせるしかない。デフォルトではぴったし440Hzなので、問題ないが、誤って動かしたら、440Hzに戻すのは結構大変な作業となる。440Hzで問題ない場合は、決していじってはいけないノブ。
VOLUME:最終的な音量をここで調整する。
スライドスイッチ:オクターブトランスポーズ。3点あり、左から低(DOWN)、中(NORMAL)、高(UP)の順になっている。
ML/G-MLボタン:これは多分MIDI Learn。その手の機器を持ち合わせていないので、未確認。
LFO(Low Frequency Oscillator)
低周波を作り出す部分。
RATE:揺れ時間の調整。
DELAY TIME:どれぐらい遅れてから揺らすかを設定する。
TRIG MODE:Autoにすると、音の鳴り始めが常に初期状態から始まり、OFFにすると、音の鳴り初めに関係なく音が揺れる。下サンプルは始めはAutoで、その後OFFにしている。
WAVE:独自機能で、sin、tri、saw、rec、noiseから選べる。下は矩形波にLFOを適用して順に鳴らしたもの。LFOの深さは最大の2オクターブにしている。最後のノイズだけは、RATEを速くしている。
WAVE TEMPO:独自機能でシーケンサーのテンポに合わせて揺れを決定することができる。
DCO(Digital Controlled Oscillator)
Juno-60はアナログオシレーターではなくデジタルなので、よく見かけるVCO(Voltage Controlled Oscillator)や、OSC(Oscillator)ではなく、デジタルを強調したDCO(Digital Controlled Oscillator)という名前になっている。ただ今風のデジタル波形をDACで変換するという構成ではなく、アナログ信号をデジタルスイッチで制御しているというオシレータ。これはアナログシンセと言い切ってもいいと思えてしまうが、当時はデジタルが売りになったのだろう。現在ではアナログが売りになるのだから面白い。
LFO:深さを調整。すべての波形に適用される。最大の深さにすると音程的には弾いている音に対して±1オクターブで、2オクターブの揺れになるようだ。
PWM(Pulse Width Modulation): このスライダーは横のスイッチによって動作が異なる。これはパネルの線の通り矩形波専用で、ノコギリとサブには影響しない。
OFFの場合は、下のようにパルスウィズが変化する。サンプルは下から上へスライドした時の音。
スライドが下の場合、デューティ比50%
スライドを一番上にするとこんな形になる。
LFOの場合は下図のように矩形波のパルスウィズがLFOの影響を受けて変化する。
LFOがOFF(パルスウィズ固定)の場合と、ONにした場合の違い。LFOの周期に合わせてデューティ比が繰り返し変化しているのがわかる。 ピッチが変化しているわけではない。
ENVの場合は下図のように矩形波のパルスウィズがENVの影響を受けて変化する。
ENVがOFF(パルスウィズ固定)の場合と、ONにした場合の違い。VCAをGATEにしているので、OFFだとすごく単調な音。ENVをONにするとピッチの揺れとは違う複雑なうなりのような音が生まれる。ENVなので、繰り返すことはなく出だしだけが変化する。
中央の3つのボタンは波形のON/OFF
矩形波、調整不可のノコギリ波、サブのオクターブ下の矩形波となっている。 Juno-60は1オシレータなので、メイン矩形波以外は、バリエーションと考えてよさそう。
ノコギリ波とサブは、メインの矩形波から作られているので、各パラメータの影響を受けている。 ノコギリ波はON/OFFだけ、サブはレベルのみ調整可能。下サンプルはノコギリ波。
NOISE:ホワイトノイズのレベル調整。ON/OFFはない。 LFOとVCFなどの設定は適用される。ほかのOSCと同じ設定になってしまうので、細かな調整はできない。 下サンプルはノイズ。
ホワイトではあるが、下のように周波数特性を見るとハイが緩やかに削られた感じで、あまり耳に痛くない。
HPF(High Pass Filter)
ハイパスフィルタで低音をカットする。 カットオフ周波数を設定できる。 シンセではあまり見かけないフィルタ。
下はHPFのカットオフ周波数を最大にしてノイズをカットしてみたところ。周波数特性を見ると、中低域はがっつり削られるので、低音楽器を邪魔したくないときに使うとよいかもしれない。
VCF(Voltage Controlled Filter)
FREQ:カットオフ周波数の決定を行う。レゾナンスとのコンビで、アナログシンセにとって一番おいしい部分。基本的にはLPF(ローパスフィルター)の原理で、高音域を遮断する周波数を決めるところ。切った部分の周波数は盛り上がりやすく、特徴的な音色になる。その調整は下のレゾナンスで行う。
下サンプルはカットオフ周波数をいじっている。
RES:レゾナンス。カットオフ周波数付近を強調する。ジュワーとかビヨーンとか、アナログらしい音を作ることができる。
VCF ENV POLARITY:上下のレバーでNORMAL(上)とINBERTED(下)が選べる。下にするとENVが逆さまになる。
通常はノーマルで使うが、効果音的音や、ちょっと不思議な音を作るときはインバートする。 VCFにENVを適用するので、FREQをENVに従って上下する動きになる。ノーマルの場合は、設定したFREQに対して上方向にいじれる。インバートの場合は、下方向にいじれると考えてよいと思う。ENVの設定と視覚的に逆の動きになるので、やや慣れが必要というところ。 またENVのS、サスティーンに関しては、FREQの基準値を変化させてしまうため、注意が必要。ENVは通常VCAにも適用するので、常に0というわけにはいかないだろう。そんなこともあってか、最近のシンセはENVが2個以上あったりする。
Juno-60のプリセットでは、いくつか該当する音がある。 下サンプルはSpace Sound1の音。あるアニメ映画の冒頭の音ぽかったので、真似てみた。故キース・エマーソン。
ENV:ENVの感度を調整。FREQ(カットオフ周波数)のポイントがENVに沿って変化する。
LFO:LFOの感度を調整。FREQ(カットオフ周波数)のポイントがLFOの周期に沿って変化する。
KYBD:やや挙動が不明のスライド。マニュアルにはキーボードの感度を調整。音の高さによって倍音成分が変化するのを防ぐ。通常は最大にして上げて使われるとある。
実際試すと、最大にすると低域はこもりがちになり、最小にすると高域がこもる。使いたい音域に合わせて、調整するしかなさそう。
VCFのトリッキーな使い方としてRESを全開にしてオシレータなしで、VCFを発振させて共鳴音だけで音階を出すことができる。Juno60のホイッスルの下サンプルなどがそれ。音が伸びると下がっていくし、パラメーターの位置で音程は変化するし、きれいな音階にもなりにくい。扱いにくいが面白い。
VCA(Voltage Controlled Amplifier)
時間的な音量を調整するアンプ部。
E/Gスイッチ:ENVかGATEを選択できる。 ENVにするとエンベロープの設定に従って音量が時間的に変化する。 GATEは時間的に音量は変化せず、鍵盤のON/OFFに反応するだけのモード。
LEVEL:音量の調整。
ENV(Envelope Generator)
ADSR(Attack、Decay、Sustain、Release) 多くのシンセで未だに使われているパラメータ。音の時間的に変化するダイナミクスや、フィルターのカットオフ周波数を調整したりする。Sは時間ではなく鍵盤を押して安定した状態のレベルを表し、音量、カットオフ周波数などに変化を与える。
下サンプルはVCAにENVを適用した例で、はじめにENVなしのビープ音で、次にENVをかけたもの。ENVのパラメータはADSRすべて4にした。
波形を見るとよくわかる。
下サンプルはVFCのカットオフ周波数にENVを適用した例。はじめにENVなしのビープ音で、次にENVをかけたもの。 ただのビープ音が、ビョワーンという音になっている。最後の方の音は元のビープ音になっているのが分かると思う。
音作り
Roland Juno-60のマニュアルにあるプリセットを参考にいじってみる。 初期状態から、音を出しながら、パラメータをいじっていくと、どう変化していくのかよくわかる。 各パラメータの役目が明らかになるので、理解がスムーズになる。 始めVCFのポラリティー・スイッチがどう機能するのか分からなかったが、プリセットのオルガンの作り方をなぞってみたら、なるほどと思えた。シンプルな操作系だが、意外と奥が深そう。Juno-60のマニュアルを見ながらプリセットを作ってみた。実機の動画を参考に、音をそれっぽく近づけてみた。パラメータの調整次第で、結構近い音が出る。fxbファイルにまとめた。U-NO-62のプリセットの後にJuno60のプリセットが入っている。
juno60_preset.fxb
Cakewalkから見た操作可能なパラメータ
オートメーションレーンに出てくるパラメータは以下の通り。下は実際に試した結果。いくつか不明なものがあったり、機能しなかったり、またすべてのつまみやスイッチに割り当てられているわけでもないようだ。必要に応じてオートメーションで操作すればよいということだろう。名前が一致していないので、何とも使いにくい。
VOLUME | VOLUME |
MSTERPITCH | TUNE |
SAW | DCO SAW SW 0=Off 他ON |
SUBOSC | DCO SUB SW 0=Off 他ON |
SUBOSCVOLUME | DCO SUB OSC |
NOISEVOLUME | DCO NOISE |
SQUAREPWMODE | DCO LFO ENV 0=LFO 他ENV |
SQUAREPWINTENSITY | DCO PWM |
OSCLFOINTENSITY | DCO LFO |
HPCUTOFF | HPF |
CUTOFF | VCF FREQ |
RESONANCE | VCF RES |
FILTERCONTOURBIAS | VCF SW 0=NORMAL 他INBERTED |
FILTERCONTOUR | VCF ENV |
FILTERLFO | VCF LFO |
KEYFOLLOW | VCF KYBD |
ENVGATE | VCA 0=ENV 他GATE |
ENVVOLUME | VCA LEVEL |
AMPATTACK | ENV A |
AMPDECAY | ENV D |
AMPSUSTAIN | ENV S |
AMPRELEASE | ENV R |
LFO1RATE | LFO RATE |
LFO1DELAY | LFO DELAY TIME |
LFO1TRIGGER | LFO TRIG MODE 0=AUTO 他OFF |
LFO1WAVEFORM | 動かない |
LFO1CLOCK | 動かない |
ENVVELOCITY | CONTROL VELOCITY ENV 0最小 最大値が最大 |
CUTOFFSMOOTH | どのボタンに充てられているか不明 |
MODDCO | PITCH WHEEL DCO |
MODVCF | PITCH WHEEL VCF |
TRANSPOSE | 3点SW 最大=高域 中間=中域 最小=低域 |
CHORUS1 | 最大でON 最小でOFF |
CHORUS2 | 最大でON 最小でOFF |
VOICEMODE | CONTROL VOICES 最小で6 最大で1 他は反応しない |
まとめ
感心するのは、共鳴までシミュレートしている点。オシレータを鳴らさなくても、レゾナンスの設定次第で、音が出たりするのは面白く、本物を扱っている気にさせてくれる。トリッキーな使い方もいろいろあるっぽい。アナログシンセは音の変化がイメージしやすい(口で言いやすい)ので扱いやすい。FM音源とはえらい違い。 なので弾きながらでも音を変化させられる。アナログシンセは、そういう使い方をすることが多いのもうなずける。結果的に音作りの時間がFM音源よりも短くなる。あと限界も見えやすいので、これ以上は無理と判断できたりもする。アナログシンセは人間にやさしいようだ。
ソフトシンセ全般に言えることだが、プリセットだけ選んで使うならまだしも、音を自由に作れるようになるには、ある程度中身から理解が必要。そうなると、あれもこれも使うわけにはいかず、どれかに絞り込んで使いこなすことになる。 ハードであれば、設置の問題から、自ずと絞り込むことになるが、ソフトでは際限がなく性質が悪い。 個人的にはソフトシンセはdexedだけで十分で、U-NO-62はアナログの操作性(パラメータ変化)がほしいときに使うぐらいになりそう。ただ、ポルタメントできなかったり、古典的なシンセなので音作りの自由度は、あまり高いとはいえない。それでも独特な愛嬌がある音なので結構気に入っている。